建築コストの上昇が止まらないなかで、新築住宅への太陽光発電の設置義務化が各地で動き出しています。
工務店の営業担当者にとっては、上がり続ける建築費にさらに太陽光の費用まで乗せることになるのか、施主にどう説明すればよいのかが悩みどころといえるでしょう。
ただし制度の中身を正確に押さえていくと、義務化の対象や仕組みは報道から受けるイメージとかなり異なっていることがわかります。
この記事では建築費の実際の上昇幅から、東京都や川崎市で始まった義務化制度の中身、そして施主への伝え方とコストを上げずに備える方法までを整理して解説します。
建築コスト高騰と太陽光義務化が同時に進んでいる

建築費の高騰と太陽光発電の設置義務化は、それぞれ別の文脈で語られることが多いですが、工務店の現場では同じ商談のなかで同時に降りかかってきます。
まずは建築費が実際にどこまで上がっているのか、義務化がいつどこで始まったのかという事実関係を押さえておきましょう。
建築費はこの10年で約3割上昇している
日本の建築費はこの10年間で大幅に上昇しました。 国税庁が公表している『建物の標準的な建築価額表』をもとに、どの程度の建築費上昇があるかを見ていきましょう。
| 構造 | 2013年 | 2023年 | 2025年 |
|---|---|---|---|
| 木造 | 15万9,900円/㎡ | 20万4,100円/㎡ | 23万2,500円/㎡ |
| 鉄筋コンクリート造 | 20万3,800円/㎡ | 31万4,300円/㎡ | 40万9,800円/㎡ |
| 鉄骨造 | 16万4,300円/㎡ | 28万1,100円/㎡ | 37万1,400円/㎡ |
2013年と2023年を比べると、木造は15万9,900円から20万4,100円へと約28%上昇しています。
鉄筋コンクリート造と鉄骨造は、木造をさらに上回るペースで上がりました。
直近の建築着工統計をもとに算出した2025年の水準まで並べると、上昇の勢いが加速していることが読み取れます。
木造は10年で約3割、直近2年でさらに1割強という上がり方をしています。 資材費と労務費の両方が上昇しており、この流れが短期間で反転するとは考えにくいのが実情です。
2025年4月から新築住宅への太陽光設置義務が始まった
2025年4月より、東京都と川崎市で新築建物を対象とした太陽光発電設備の設置義務制度がスタートしました。
ここで重要なのが、義務の名宛人は施主ではなく建物を供給する事業者であるという点です。
東京都も川崎市も、1棟ごとに設置を強制する仕組みではなく、一定規模以上の供給量を持つ事業者に対して年間の総量で基準を満たすことを求める制度設計になっています。
日照条件や敷地条件によって設置に適さない建物があることを前提に組み立てられているため、すべての新築住宅にパネルが載るわけではありません。
コスト増と義務化が重なることで受注判断が難しくなっている
当然のことながら、太陽光を載せればパネル代と工事費が上乗せされるため、未設置の住宅と比べて初期の建築費用は高くなります。
ただでさえ建築費が上がっており住宅価格も上がっているなかで、コストが二重に積み上がる構造になっているわけです。
元請や供給元となる事業者が義務対象であれば取引を通じて要請が下りてきますし、報道によって施主側の認知も高まっています。
太陽光発電の設置義務化はいつから・どこで始まっているのか

自社が対象になるのか、施主に何を説明すべきかを判断するために、太陽光発電設置義務化制度の中身を個別に確認しておきましょう。
東京都|建築物環境報告書制度
東京都の建築物環境報告書制度は、2022年12月の環境確保条例改正によって創設され、2025年4月に施行された新制度です。
対象となるのは延べ面積2,000平方メートル未満の中小規模新築建築物で、戸建住宅もここに含まれます。(中小規模新築建物における対策|地球環境・エネルギー|東京都環境局)
義務を負うのは都内で年間に延べ面積の合計2万平方メートル以上の中小規模建築物を建設等する建物供給事業者、いわゆる特定供給事業者です。
都の試算では該当する事業者は50社程度と見込まれており、実質的には大手ハウスメーカーが対象となります。
川崎市|特定建築事業者太陽光発電設備導入制度
川崎市は2023年3月に川崎市地球温暖化対策等の推進に関する条例を改正し、建築物太陽光発電設備等総合促進事業を創設しました。
このうち延べ床面積2,000平方メートル未満の建築物を対象とする制度2、特定建築事業者太陽光発電設備導入制度が2025年4月から施行されています。(参考:川崎市 : 建築物への太陽光発電設備の設置義務制度)
こちらも東京都と同様、市内で年間一定量以上の新築を行う大手ハウスメーカー等の建築事業者に対し、事業者単位で設置基準量以上の太陽光パネル等の設置を義務づける仕組みです。
設置基準量は年間供給棟数に1棟当たり基準量と算定基準率を掛けて算出され、1棟当たり基準量は2kWに設定されています。
京都府・群馬県の先行事例
京都府と京都市では、床面積300㎡以上2,000㎡未満の準特定建築物に対し、年間3万MJ以上の再生可能エネルギー設備の導入を義務づけています。
太陽光発電に換算した容量は、算定条件によっておおむね2.5~3.2kW程度です。(参考:特定建築物排出量削減・再生可能エネルギー導入計画・報告・公表制度/京都府ホームページ)
群馬県はぐんま5つのゼロ宣言実現条例に基づき、延べ床面積2,000平方メートル以上の建築物を新築・増築・改築しようとする特定建築主に対して再生可能エネルギー設備の導入を義務づけています。(参考:特定建築主による再生可能エネルギー設備の導入義務付け – 群馬県ホームページ(グリーンイノベーション推進課))
こちらは大規模建築物が対象であり、戸建住宅への義務ではありません。
太陽光の義務化はなぜ進むのか、指摘されている課題はどこにあるのか

義務化に対して施主から不安や疑問をぶつけられる場面は少なくありません。
制度が進む背景と、実際に指摘されている課題、そしてそれに対する現在の制度的な手当てをセットで理解しておけば正確な説明ができるはずです。
背景にあるエネルギー基本計画と屋根置き活用の必要性
2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、2050年カーボンニュートラルに向けて再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入する方針が示され、2040年度のエネルギーミックスにおける再エネ比率は約4割から5割程度とされました。
そのなかで屋根置き太陽光の重要性が高まっています。
近年、大規模な太陽光発電に対して自然環境や安全、景観といった面から懸念の声が上がり、2025年12月には政府が大規模太陽光発電事業に関する対策パッケージを決定しました。
一方で建物の屋根に設置する太陽光発電は、既存の建物を活用するため新たな土地が不要で、環境や景観への影響も比較的小さく抑えられます。
住宅の屋根はこれまで十分に活用されてこなかった発電ポテンシャルであり、新築時に設置しておけば後付けよりも工事費を抑えられます。
指摘されている課題
太陽光発電の義務化に対しては、主に次の4つの課題が指摘されています。
- 初期費用の負担
- 廃棄とリサイクル
- 災害時の扱い
- 日照条件
太陽光発電の義務化において論点となるのが、初期費用の負担です。建築費が上昇するなかでさらに数十万〜数百万円が建築費に上乗せされることへ、抵抗を示す施主も多いです。
また、太陽光パネルの寿命が来た際の廃棄やリサイクル問題も重要です。日本では2030年代後半以降に太陽光パネルの排出量が増加し、年間最大50万トンに達する可能性があると指摘されています。
加えて災害時の扱いについても懸念があります。
停電時にパネルが使えるのか、被災したパネルによる感電による事故の可能性も否定できません。
最後に、太陽光パネルはどのような場所にも設置できるわけではありません。日照条件が適合しなければ発電量が十分見込めず、初期費用の回収が遅くなることもあります。
課題に対する現在の制度的な手当て
太陽光発電の義務化においては多くの課題がありますが、その課題について制度面での手当ても考案されています。
たとえば、日照条件については東京都や川崎市も個々の建物の日照条件や立地条件、屋根形状を踏まえて、事業者単位の総量で達成を判断する仕組みが採用されています。
東京都は算出対象屋根面積が20平方メートル未満の建物は設置基準の算定から除外できる仕組みで、区域ごとに算定基準率を3段階で設定するなど、条件が悪い建物には無理に設置が必要ない仕組みです。
また、太陽光発電の廃棄については太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律2026年5月に成立しており、廃棄処理の体制の構築が進んでいる状態です。
太陽光発電義務化が住宅価格に与える影響と施主への伝え方

太陽光発電設備の義務化が大きく影響するのが住宅価格です。
施主にとってその負担が意味のあるものなのか、どう伝えれば太陽光発電の意義を理解してもらえるかを理解しておきましょう。
太陽光設置による1棟あたりの費用増加の目安
『令和8年度以降の調達価格等に関する意見』によると、2025年に新築住宅へ設置された住宅用太陽光発電(10kW未満)のシステム費用は平均28.9万円/kW、中央値は29.4万円/kWでした。
これは国が価格算定に用いている想定値25.5万円/kWを上回る水準で、費用の内訳は太陽光パネルが約47%、工事費が約29%を占めます。
この単価をもとに設置容量別の目安を計算すると、次のようになります。
| 設置容量 | 費用の目安 |
|---|---|
| 2kW | 約58万円 |
| 4kW | 約116万円 |
| 5kW | 約145万円 |
※あくまで全国平均から算出した目安であり、屋根の形状や屋根材、メーカー、施工体制によって実際の金額は上下します。
上記の目安を参考にすると東京都や川崎市が基準としている1棟当たり2kWであれば60万円弱、一般的な4kWから5kWの容量で100万円台という感覚をつかんでおけば、初期の資金計画の相談に即座に応じられるようになります。
なお、太陽光発電システムの設置費用は既築住宅より新築のほうが安く抑えられます。
省エネ基準適合義務化とあわせた負担の考え方
2025年4月からは建築物省エネ法の改正により、原則としてすべての新築住宅・非住宅に省エネ基準への適合が義務づけられました。
基準に適合しなければ建築確認が下りないため、従前の仕様が基準を満たさない住宅では、断熱仕様の見直しなどによるコスト増が生じます。
つまり施主から見ると、断熱性能の底上げによる費用増と太陽光による費用増が同時期に押し寄せているように映ります。
ここで有効なのが、この2つを別々の負担ではなく一体の性能投資として説明するという組み立て方です。
断熱性能を高めれば冷暖房に必要なエネルギーが減り、太陽光を載せればそのエネルギーを自宅でまかなえる割合が高まります。
断熱と創エネは掛け算で効いてくる関係にあり、片方だけを強化するより両方を揃えたほうが光熱費の削減幅は大きくなるわけです。
省エネ基準への適合が必須になった以上、そこに太陽光を組み合わせて性能を完成させるという説明のほうが、施主にとっては納得感を得やすいでしょう。
施主に「元は取れるのか」と聞かれたときの説明軸
太陽光の提案で必ず投げかけられるのが「元は取れるのか」という質問です。
ここで安易に回収年数を断言すると後々のトラブルにつながるため、国が価格算定に用いている想定値を示しながら、条件によって変わることを丁寧に伝えるのが確実です。
2026年度の住宅用太陽光発電(10kW未満)について、国は次の数値を前提に調達価格を設定しています。
| 項目 | 想定値 |
|---|---|
| FIT調達価格 | 運転開始から4年目まで24円/kWh、5〜10年目8.3円/kWh |
| 自家消費分の便益 | 27.31円/kWh |
| 設備利用率 | 13.7% |
| 余剰売電比率 | 70.0% |
| 運転維持費 | 0.30万円/kW/年 |
| 調達期間終了後の売電価格 | 10.0円/kWh |
この表からわかるのは、太陽光発電による自家消費分の便益27.31円/kWhがFIT調達価格24円/kWhを上回っていることです。
発電した電気を売るよりも自宅で使うほうが1kWhあたりの価値が高く、その差はFIT期間が終われば売電価格が10円程度まで下がることでさらに広がります。
つまり、電気が高く売れるという論点ではなく、電気を買わずに済む=電気代が安くなるという論点で説明するのが良いでしょう。
価格転嫁が受注に響く局面での提案の組み立て方
建築費が上がり続けるなかで太陽光の費用まで本体価格に乗せれば、総額が予算の上限を超えて商談が止まってしまうことがあります。
この局面で有効なのは、総額ではなく月々の支出で比較する土俵に持ち込むという組み立て方です。
住宅ローンに太陽光の費用を組み込んだ場合、月々の返済増加額は数千円規模にとどまります。
一方で発電による電気代の削減額がその増加額を上回れば、月々の家計の手残りはむしろ増える計算になります。
総額で百数十万円と聞くと身構える施主も、月次の収支で提示されれば判断しやすくなるでしょう。
建築コストを上げずに太陽光義務化へ備える3つの方法

太陽光の費用を本体価格に上乗せする以外にも、初期費用の負担を抑える手段は複数あります。
それぞれの特徴と使いどころを押さえて、施主の状況に合わせて提示できるようにしておきましょう。
補助金を最大限活用する
国と自治体の補助制度を組み合わせれば、実質的な負担を大きく引き下げられます。 2026年7月時点で活用できる主な制度は次のとおりです。
子育てグリーン住宅支援事業の後継事業。注文住宅の新築では、GX志向型住宅が地域区分1〜4地域で125万円/戸、5〜8地域で110万円/戸。
長期優良住宅は80万円/戸または75万円/戸、ZEH水準住宅は40万円/戸または35万円/戸。長期優良住宅とZEH水準住宅は子育て世帯または若者夫婦世帯が対象で、GX志向型住宅はすべての世帯が対象(参考:対象要件の詳細【注文住宅の新築】)
新築住宅は3.6kW以下で12万円/kW(上限36万円)、3.6kWを超える場合は10万円/kW。陸屋根の集合住宅には架台設置経費の上乗せもあり、令和8年度の予算額は関連事業全体で約1,012億円(参考:令和8年度 家庭における太陽光発電導入促進事業)
その他、地方自治体でも独自の補助金制度を展開しているので、確認してみましょう。
一方で地方公共団体の補助制度については、国費が充当されているものを除いて併用が可能です。
また、いずれの制度も予算上限に達した時点で受付が終了するため、着工スケジュールと申請時期を早い段階で擦り合わせておく必要があります。
制度の内容は年度ごとに改定されるため、提案時には必ず各制度の公式サイトで最新情報を確認してください。
PPAモデルを検討する
太陽光発電のPPAモデルとは、事業者が施主の屋根を借りて自社の費用で太陽光発電設備を設置し、発電した電気を施主が使った分だけ電気料金として支払う仕組みです。
施主にとっての最大のメリットは、初期費用をかけずに太陽光を設置でき、メンテナナンスや故障時の対応も事業者が負う点です。
また契約期間が満了すると設備は施主へ無償譲渡され、以降は発電した電気をすべて自由に使えるようになります。(契約によって異なる)
一方で、契約期間中は発電した電気を購入する形になるため、自家消費した電気が完全無料になるわけではない点は理解しておきましょう。
契約期間も10年から15年程度と長期にわたるため、途中解約時の条件を含めて契約内容を施主と一緒に確認しておく必要があります。
太陽光リースで初期費用を建築費に含めない
太陽光リースを用いれば、初期費用を建築費用に含めずに太陽光パネルを設置できます。
太陽光リースはリース事業者が設置した設備を、施主が月額定額で借り受ける方式です。
発電した電気は自宅で使用でき、余剰分を売電できる場合もあります。
工務店にとって注目すべきなのは、太陽光の費用を住宅本体価格に上乗せせずに義務化へ対応できるという点です。
工務店にとって注目すべきなのは、太陽光設備の費用を住宅本体価格へ上乗せせずに導入できる点です。
住宅本体に組み込む設備費を抑えられるため、建築費が高騰し予算が逼迫している場合にも提案しやすくなります。
まとめ
建築費はこの10年間で大きく上昇し、そこに加えて太陽光発電の義務化などにより、施主の負担が高まっています。
しかし、太陽光発電自体は電力会社からの電力購入量を抑える効果があり、施主にとっても経済効果があることに変わりはありません。
問題は建築費の高騰により、施主が太陽光発電設備への抵抗感を示しやすくなることです。
工務店には、太陽光発電のメリットを説明するだけでなく、施主の初期負担を抑えられる導入方法を提案することが求められます。
そこでお勧めしたいのが、そこで選択肢となるのが、初期費用を抑えて導入できる太陽光リースです。
建築現場博士がおすすめする太陽光発電システムは『ダブルZERO』です。
太陽光発電システムの設置と災害対策を初期費用0円でおこなえます。
ダブルZEROを提供しているSolaCoe株式会社は、新築住宅向けに4,000件の太陽光発電システムを設置した実績とノウハウを持っています。
太陽光発電システムの申請代行もおこなっており、太陽光発電システムの経験がない工務店様でも心配はありません。
またオンライン・オフライン形式での勉強会開催や提案ツールの提供をおこなっており、太陽光発電が未経験であっても安心して施主様に提案が可能です。


















