新築太陽光の義務化制度は、自治体ごとに対象や義務の主体が大きく異なる仕組みになっています。
2026年5月時点で制度を実施しているのは、東京都・川崎市・京都府・京都市・群馬県の5自治体で、仙台市が2027年4月の施行を予定しています。
営業エリアが対象に含まれるか、誰に義務が課せられるか、罰則はあるかなど、工務店の営業担当者が把握すべきポイントは少なくありません。
本記事では、実施中の自治体の制度概要と今後の動向を整理し、施主への提案に活かせる情報をまとめました。
太陽光発電設備の設置義務についてはこちらの記事もご覧ください。
新築太陽光の義務化とは|2026年時点での全体像

新築太陽光の義務化は、国ではなく自治体単位で進められている制度です。
2026年5月時点で実施しているのは5つの自治体に限られており、制度の対象も自治体ごとに異なります。
まずは全体像を整理し、施主に正しく説明できる土台を作りましょう。
義務化の対象は「住宅を買う人」ではなく「住宅を供給する事業者」
新築住宅の太陽光義務化において、義務を負うのは主に住宅供給事業者・建築事業者です。
これは、施主一人ひとりではなく一定規模以上の事業者に義務を課すことで、効率的に普及を進める制度設計が採られているためです。
たとえば、東京都の制度では、年間の都内供給延床面積が合計2万㎡以上のハウスメーカー等が対象とされています。
川崎市の中小規模建築物(2,000㎡未満)制度でも、一定規模以上を供給する建築事業者が義務を負います。
ただし、京都府・京都市・群馬県のように、延床面積2,000㎡以上の大規模建築物を新築する建築主そのものに義務を課す制度もあるため、自治体ごとに誰が義務主体かを正確に把握することが重要です。
国は全国一律の設置義務化はしていない(省エネ基準適合義務は別)
太陽光発電の設置を全国一律で義務化する国の制度は、2026年5月時点で存在しません。
国の方針は、自治体制度と支援策の組み合わせで普及を進めることであり、太陽光設置自体を法律で一律に義務付ける枠組みは採られていないためです。
2025年4月から改正建築物省エネ法により、原則すべての新築住宅・非住宅で省エネ基準適合が義務化されていますが、これは断熱等性能等級4以上・一次エネルギー消費性能等級4以上への適合を求めるもので、太陽光発電の設置義務とは別の制度です。
なお、資源エネルギー庁は2030年において新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを目指すと示しています。
国の方針と自治体の義務化制度を混同せず、施主への説明時には明確に切り分けることが大切です。
自治体ごとの制度を確認することの重要性
新築太陽光の義務化制度は自治体ごとに大きく異なるため、自社の営業エリアの制度を個別に確認することが欠かせません。
全国一律ではない以上、対象建物の延床面積、義務を負う主体、罰則の有無、日照条件の取り扱いなどが自治体間で異なるからです。
2026年5月時点で義務化制度を実施しているのは、東京都・川崎市・京都府・京都市・群馬県の5自治体で、それぞれ制度の目的・対象規模・義務の内容が異なります。
自社の営業エリアに該当する制度がある場合、設計段階から太陽光発電の導入を前提に提案を組み立てる必要があります。
出典:自然エネルギー財団「太陽光発電の設置義務化の効果:住宅に広がり、光熱費の削減に」
自治体ごとの制度の違いを比較|対象・基準・罰則

実施中の5自治体は、それぞれ異なる目的・経緯・対象規模で制度を運用しています。
東京都・川崎市が新築住宅を主な対象としているのに対し、京都府・京都市・群馬県は工場や倉庫など大規模建築物を中心に対象としてきた経緯があります。
ここでは制度比較の軸となる4つの観点から、各自治体の違いを整理します。
対象建築物と延床面積の基準(300㎡/2,000㎡など)
自治体ごとに、太陽光設置義務化の対象となる建物の延床面積の閾値が異なります。
これは各自治体が、自治体内の建築物ストック構成やCO2削減目標に応じて、独自に対象範囲を設計しているためです。
実施中の4自治体(東京都・川崎市・京都府/京都市・群馬県)の対象範囲を整理すると、以下のようになります。
| 自治体 | 対象建築物の延床面積 | 主な対象建物 | 制度の特徴 |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 2,000㎡未満(中小規模) | 戸建・マンションを含む新築建物 | 大手住宅供給事業者へ義務 |
| 川崎市 | 2,000㎡以上/2,000㎡未満の両制度 | 戸建住宅含む新築建物 | 戸建住宅1棟あたり原則2kW以上 |
| 京都府・京都市 | 300㎡以上2,000㎡未満(準特定)/2,000㎡以上(特定) | 全用途の建築物 | 太陽光限定ではなく再エネ設備の導入義務 |
| 群馬県 | 2,000㎡以上(特定建築物) | 工場・倉庫など事業用建築物が中心 | 特定建築主が対象 |
東京都と川崎市は新築住宅を含む幅広い建物が対象となるのに対し、京都府・京都市・群馬県は大規模建築物が中心となっている点が大きな違いです。
特に京都府・京都市の制度は、太陽光発電に限定せず再生可能エネルギー設備全般の導入を求める枠組みである点に注意が必要です。
義務の対象者は「事業者」か「建築主」か
義務を負う主体は、自治体によって事業者か建築主かで分かれます。
住宅向け制度では大手事業者を対象とすることで広く普及を狙う一方、大規模建築物向け制度では建築主そのものに義務を課す方が実効性が高いという、制度設計の違いによるものです。
東京都・川崎市の中小規模建築物(2,000㎡未満)制度は、年間一定規模以上を供給する大手住宅供給事業者・建築事業者が対象となります。
これに対し、京都府・京都市・群馬県は延床面積2,000㎡以上の建築物を新築する建築主が義務を負う仕組みです。
工務店としては、自社が事業者として義務を負うのか、義務を負う施主に提案する立場かを正確に把握することで、設計の手戻りや施主との認識ズレを防げます。
(出典:京都府再生可能エネルギーの導入等の促進に関する条例|川崎市 : 建築物への太陽光発電設備の設置義務制度)
罰則の有無と公表制度
太陽光設置義務化を実施中の5自治体ともに、刑罰や罰金といった直接的な罰則は設けられていません。
制度が「促進」や「計画提出・公表」の枠組みで設計されており、社会的評価で実効性を担保する方式が採られているためです。
東京都・川崎市の制度では、義務を果たさない事業者にまず助言・指導が行われ、それでも改善が見られない場合に事業者名が公表されます。
京都府・京都市・群馬県も同様に、計画書の提出・公表制度を通じて取り組み状況を社会的に評価する設計です。
直接の制裁はないものの、社名公表による信用リスクは大きく、対応すべき制度として捉えるべきといえるでしょう。
日照条件など対象外となるケースもある
太陽光発電設置についてすべての建物が一律対象となるわけではなく、除外条件が設けられている点もポイントです。
物理的に設置が困難な建物まで一律対象とすると合理性を欠くだけでなく、施主の不利益にもつながるためです。
東京都・川崎市の制度では、屋根面積が小さい狭小住宅、北向き斜面、日照が著しく不足する立地などは設置義務の対象外とされています。
京都府・京都市では伊根町伝統的建造物群保存地区の建造物が除外されるなど、地域特性に応じた配慮もあります。
施主への提案前に、対象建物が除外要件に該当するかどうかを確認しておくことで、無理のない計画提案ができます。
今後太陽光発電の設置義務化が予定・検討されている自治体と国の動き

実施中の5自治体に続き、仙台市・長野県などで新たな義務化の動きが進んでいます。
国レベルでも、住宅以外の建築物に対して太陽光発電の導入を促す動きが本格化しており、工務店の中長期的な営業戦略を立てるうえで欠かせない視点となります。
仙台市|2027年4月施行予定(東北初の義務化制度)
仙台市では「新築建築物への太陽光発電導入・高断熱化促進制度(ハウスメーカー等への義務化制度)|仙台市」がすでに制度化されており、令和9年(2027年)4月の施行が予定されています。
これは、2030年度に向けて二酸化炭素排出量の大幅削減目標を掲げる仙台市が、新築建築物への太陽光導入と高断熱化を加速させる必要があるためです。
対象は、延床面積2,000㎡未満の住宅・店舗等を年間延床合計5,000㎡以上新築する建築事業者と、延床面積2,000㎡以上の大規模建築物の建築主となります。
罰則を設けず、積極的に取り組む事業者を評価・表彰する促進制度として設計されており、高断熱基準についても国が2030年度までに引き上げる基準を前倒しで達成することが求められます。
東北地方初の義務化制度として、今後の他自治体への波及効果が注目されています。
国(経済産業省)|2026年度から事業者向けに「設置目標策定」を義務化
国の制度は、太陽光発電設備の設置そのものを一律に義務付けるものではありません。
特定事業者等に対し、屋根置き太陽光発電設備の設置に向けた定性的な目標を定め、中長期計画書へ記載することを求める仕組みです。
2026年度から、改正省エネ法に基づき年間原油換算で1,500キロリットル以上のエネルギーを使用する約12,000の特定事業者・施設が対象となり、工場・店舗・倉庫・公共施設などが中心です。
2027年度以降は施設ごとの設置可能面積・実績の報告が段階的に始まる予定で、運用は徐々に強化されていく見込みです。
住宅向けの義務化ではないものの、非住宅建築を手がける工務店にとっては重要な制度動向として押さえておく必要があります。
他の自治体でも検討の動きが拡大している背景
太陽光発電の設置義務化を検討する自治体は、今後も増えていく可能性が高です。
2030年までに新築戸建住宅の6割に太陽光発電を導入するという国の目標と、カーボンニュートラルに向けた自治体間の取り組み競争が背景にあるためです。
たとえば、長野県は大規模な新築建物を対象に、2028年度からの義務化開始を方針として打ち出しています。
横浜市は延床面積2,000㎡以上の建築主に再生可能エネルギー導入検討報告制度を課しており、設置義務ではないものの導入検討を求める制度を運用しています。
工務店の営業担当者は、自社の営業エリアと隣接エリアの最新動向を継続的に確認し、先回りで対応できる体制を整えておくことが重要です。(出典: 再生可能エネルギー導入検討報告制度 横浜市)
まとめ
新築太陽光の義務化は、2026年5月時点で東京都・川崎市・京都府・京都市・群馬県の5自治体で実施されており、仙台市が2027年4月施行を控えています。
自治体ごとに対象建物・対象者・閾値・罰則の有無が異なるため、自社の営業エリアに合わせて制度を個別に確認することが欠かせません。
今後も国の目標達成に向けて義務化を検討する自治体は増えていくと予想され、設計段階から太陽光発電を前提とした提案力が工務店の競争力を左右する時代に入っています。
施主への提案にあたっては、初期費用ゼロで導入できるリース型のシステムなど、多様な選択肢を比較検討することが重要です。
他社システムとの機能・費用・施主負担の違いを把握しておくことで、義務化対応と施主満足度の両立を実現する説得力のある提案につながります。
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