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壁や窓が発電所に?ペロブスカイト太陽電池とBIPVが変える未来のエネルギー

次世代の太陽電池として注目を集めるペロブスカイト太陽電池と、建材そのものに発電機能を持たせるBIPV。

この2つの技術が組み合わさることで、都市部のビルや工場、さらには電気自動車のボディまでが発電所に変わる可能性が出てきました。

日本政府も2040年までに国内で20GWの導入目標を掲げるなど、脱炭素社会の実現に向けた切り札として大きな期待が寄せられています。

この記事では、ペロブスカイト太陽電池とBIPVの基本から最新の導入事例、実用化に向けた課題と市場展望まで、建設業界に携わる方が施主に説明できるレベルで詳しく解説します。

こちらの記事はこのような方におすすめです
  • 施主から「次世代の太陽光発電って何?」と質問される営業担当者
  • ペロブスカイト太陽電池やBIPVの基本を押さえたい方
  • 自社の提案に最新の太陽光技術の情報を取り入れたい方
  • 太陽光発電の今後の市場動向を知りたい方

ペロブスカイト太陽電池とBIPVの基本|次世代技術の融合

ペロブスカイト太陽電池とBIPVの基本|次世代技術の融合

ペロブスカイト太陽電池とBIPVは、それぞれ異なる角度から太陽光発電の可能性を広げる技術です。

まずはそれぞれの特徴と仕組み、そして両者を組み合わせることで何が変わるのかを見ていきましょう。

こちらの記事はこのような方におすすめです
  • 施主から「次世代の太陽光発電って何?」と質問される営業担当者
  • ペロブスカイト太陽電池やBIPVの基本を押さえたい方
  • 自社の提案に最新の太陽光技術の情報を取り入れたい方
  • 太陽光発電の今後の市場動向を知りたい方

「ペロブスカイト太陽電池」とは?特徴と仕組みを解説

ペロブスカイト太陽電池は、フィルムや薄いガラスなどの基材の上に、ペロブスカイト結晶構造を持つ化合物を塗布して作られる次世代の太陽電池です。

従来のシリコン型太陽電池と比較したときの最大の特徴は、「薄い・軽い・曲がる」という3つの性質を兼ね備えている点にあります。

フィルム型であればぐにゃりと曲げることもでき、設置場所の自由度が飛躍的に広がります。

製造面でも大きなメリットがあります。

塗布印刷技術を用いて製造できるため、高温プロセスが必要なシリコンパネルと比較して製造時のエネルギー消費が少なく、将来的には安価に大量生産が可能になると期待されています。

発電効率についても、従来のシリコン太陽電池に匹敵する水準に達しつつあり、技術的な進歩が著しい分野です。

ペロブスカイト太陽電池について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

「BIPV(建材一体型太陽光発電)」とは?従来のパネルとの違い

BIPV(Building-Integrated Photovoltaics)とは、建材と一体化した太陽光発電システムのことです。

従来の太陽光発電は、重いシリコンパネルを屋根や壁に「後付け」で設置する方式が一般的でした。

一方でBIPVは、窓ガラスや外壁材そのものに発電機能を持たせるという考え方であり、建物の外観やデザインを損なうことなく設置できる点が、従来方式との大きな違いです。

例えば、窓ガラスにBIPVを用いれば、窓で断熱(省エネ)しながら窓で発電(創エネ)するという一石二鳥の機能を実現できます。

つまり、建物そのものがエネルギーを生み出す設備になり得るでしょう。

なぜ今、ペロブスカイトとBIPVの組み合わせが注目されるのか

日本は国土の約7割を山地が占めており、平地面積が限られています。

従来のメガソーラーを設置できる適地はすでに減少しつつあり、再生可能エネルギーの導入をさらに拡大するには、新たな設置場所の開拓が不可欠です。

そこで注目されているのが、都市部の高層ビルの壁面や窓、耐荷重の低い屋根など、重くて硬いシリコンパネルを設置しにくかったスペースです。

そのような場所へ建材に組み込みやすいペロブスカイト太陽電池を用いて、設置場所の制約を打破できます。

設置場所の制約を打破し、あらゆる建物の表面を発電スペースに変えられる可能性を持つこの組み合わせは、日本が抱えるエネルギー課題を解決する有力な手段として注目されています。

BIPVにペロブスカイト太陽電池を採用する3つのメリット

BIPVにペロブスカイト太陽電池を採用する3つのメリット

ペロブスカイト太陽電池をBIPVに採用することで、従来のシリコンパネルでは実現が難しかった多くのメリットが生まれます。

ここでは、特に注目すべき3つのポイントを解説します。

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  • 施主から「次世代の太陽光発電って何?」と質問される営業担当者
  • ペロブスカイト太陽電池やBIPVの基本を押さえたい方
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デザインの自由度:曲がる・透ける・軽量化の実現

ペロブスカイト太陽電池の大きな魅力は、高いデザインの自由度です。

レーザー加工技術を用いて太陽電池層に光を通す領域を作ることで、透過性を細かく調整できます。

これにより、窓ガラス向けのシースルータイプの太陽電池を実現でき、外の景色を楽しみながら発電するという使い方が可能になります。

さらに、インクジェット塗布技術を活用すれば、ストライプやグラデーション柄、文字の描写など、建築用途に応じた多彩なデザインを施すこともできるようになり、建物の外観に合わせたカスタマイズが可能になるでしょう。

さらに、フィルム型は柔軟で曲がるため、円柱や波型の屋根などの曲面にも美しくフィットします。

これまで太陽光パネルの設置が難しかった形状の建物にも対応できる点は、建築設計の幅を大きく広げるでしょう。

発電効率の強み:曇天や垂直設置(壁面)でも発電可能

ペロブスカイト太陽電池は、ビルの壁面に垂直設置した場合でも十分な発電能力を発揮することが実証で確認されています。

さらに注目すべき特性は、晴天時だけでなく曇り空や室内光のような低照度の環境下でも、相対的に高い発電効率を維持できるという点です。

日本のように曇天が多い気候条件でも安定した発電が期待できるのは、大きなアドバンテージといえます。

これにより、天候や設置される方角の制約を受けにくく、建物のどの面に設置しても一定の発電効果が見込めます。

北向きの壁面や、日照条件の良くないビルの谷間でも活用できる可能性があるのです。

コストと施工性:製造コスト低減と設置工事の簡略化

ペロブスカイト太陽電池は塗布による低温プロセスで製造できるため、シリコンパネルと比べて製造コストの大幅な低減が見込めます。

高温の溶融プロセスが不要な分、製造時のエネルギー消費も抑えることも可能です。

加えて、軽量性を活かした画期的な施工方法の開発も進んでいます。

例として、日揮が開発したシート工法は、遮熱シートごと建物に固定する方法で、設置工事コストを35%削減できるとされています。

大林組のファスナー取り外し式工法は、ファスナーでシートを連結するだけで済むため、工期の短縮と容易なメンテナンスを両立しています。

軽量であるがゆえに既存建物の屋根や壁面にも大がかりな補強工事なしで設置でき、施工全体のコストと時間を大きく削減できる点は、実務上の大きなメリットです。

ペロブスカイト型BIPVの主な活用シーンと導入事例

ペロブスカイト型BIPVの主な活用シーンと導入事例
引用:Panasonic公式サイト

ペロブスカイト太陽電池を用いたBIPVは、すでに様々な分野で実証実験や導入が始まっています。

ここでは、代表的な活用シーンと具体的な事例を紹介します。

ペロブスカイト型BIPVの主な活用シーンと導入事例
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都市部ビルの窓ガラス・外壁(ZEB化の推進)

都市部のビルにおける窓ガラスや外壁への導入は、最も注目される活用シーンの一つです。

YKK APとパナソニックHDは、ガラス型ペロブスカイト太陽電池を用いた内窓の実装検証を開始しています。

既存のビルにも後付けで発電機能を付加できるため、大規模な改修工事を必要としない点が魅力です。

さらに大規模な取り組みとして、東京電力HDと積水化学工業は、建設中の高層ビルの外壁(スパンドレル部)の内部にフィルム型ペロブスカイトを設置する実証を進めています。

壁面全体を活用することで、ビル単体でメガソーラー級の発電を行うことを目指しており、建物のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化を強力に推進する事例です。

耐荷重の低い工場や倉庫の屋根

従来の重いシリコンパネルでは設置が困難だった建物への導入も、軽量なペロブスカイト太陽電池なら可能になります。

JR九州は、耐荷重が低い博多駅ホームの屋根にフィルム型ペロブスカイトを設置する検証を開始しました。

駅のホーム屋根は構造上の制約が大きく、従来型パネルの設置は現実的ではありませんでしたが、軽量なフィルム型であれば対応可能です。

また、福岡市や香川県では、耐荷重に制限のある小学校の体育館の金属屋根にペロブスカイト太陽電池を導入する実証実験が行われています。

大がかりな補強工事なしで屋根上を活用できるこれらの事例は、全国の公共施設への展開も期待されます。

電気自動車(EV)のボディや農業用ハウス

モビリティ分野への応用も進んでいます。

トヨタ自動車とエネコートテクノロジーズは2030年までのEV搭載を目指し共同開発を進めています。

ルーフだけでなくボンネットなどにも搭載して面積を広げれば、年間約3,600km分、つまり自家用車の年間走行距離の約3分の1を太陽光だけで走行できるという試算もあります。(出典:次世代太陽電池、30年EV搭載へ トヨタ・京大発新興組む|日本経済新聞

スタートアップのPXP社は、軽EVのルーフに車のデザインを損なわない漆黒の高意匠な曲がる太陽電池を搭載し、1日16kmの走行を可能にする実証をおこなっています。

さらに、ペロブスカイト太陽電池は農業分野(ソーラーシェアリング)でも活用が期待されています。

細長い架台にフィルム型を貼り付ける実証が行われており、この技術を使えば架台の支柱を減らすことができ、導入コストの低減や農機具の動かしやすさの向上につながります。

発電しながら農業を続けられるこの方式は、農地の有効活用という観点からも注目されている技術です。

ペロブスカイトの実証実験についてはこちらの記事をご覧ください。

実用化はいつ?普及に向けた課題と市場展望

実用化はいつ?普及に向けた課題と市場展望

ペロブスカイト太陽電池の将来性には大きな期待が寄せられていますが、本格的な普及に向けてはまだいくつかの課題が残されています。

ここでは、技術的課題から政府の支援策、市場規模の予測までを整理します。

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耐久性と安全性(鉛フリー化)への技術的課題

最大の課題は耐久性です。ペロブスカイトの発電層は水分に触れると分解しやすい性質があり、長期間の安定稼働には高度な封止技術が求められます。

この課題に対しては、すでに有力な解決策が開発されつつあります。

東洋製罐グループHDが開発した「超水分バリアフィルム」は、稼働年数を20年相当に引き上げる技術として注目されています。

シリコンパネルの一般的な寿命が25〜30年であることを考えると、実用レベルに近づきつつあるといえるでしょう。

もう一つの課題は安全性です。

現在の主流の製品には鉛が含まれており、環境への影響が懸念されています。

これに対し、スズなどを用いた鉛フリーの材料開発が進められており、環境負荷の低い製品の実用化に向けた取り組みが加速しています。

日本政府の支援策と国内外メーカーの開発動向

日本政府はペロブスカイト太陽電池を脱炭素の切り札と位置づけ、強力な支援を行っています。

経済産業省は「GXサプライチェーン構築支援事業」として、積水化学工業が構築する1GW級の量産ライン新設に対し、投資額の半額を補助金として支給することを決定しました。

国を挙げての量産体制構築に本格的に乗り出しているのです。

国内では、積水化学工業をはじめ、パナソニック、東芝、エネコートテクノロジーズなどが量産化や用途開発をリードしています。

一方で、中国勢を含めた激しい国際開発競争も繰り広げられており、日本が技術的優位を保てるかどうかが今後の焦点となります。

2030年に向けた市場規模予測とビジネスチャンス

調査会社の富士経済によると、世界のペロブスカイト型太陽電池の市場規模は2035年に1兆円規模となり、2022年比で31倍に急拡大すると予測されています。

日本政府は「第7次エネルギー基本計画」において、2040年までにペロブスカイト太陽電池を国内で20GW導入するという高い目標を掲げています。

2030年頃に1GW規模の量産体制を確立し、発電コストをシリコン系と同等の10円/kWh水準にまで下げるロードマップが描かれています。

このロードマップが実現すれば、建設業界にとっても大きなビジネスチャンスの到来です。

新築住宅やビルの設計段階からBIPVを組み込む提案ができれば、競合他社との差別化にもつながるでしょう。

ペロブスカイトの実用化に向けての取り組みについてまとめた記事も、ぜひご覧ください。

まとめ:ペロブスカイト×BIPVが脱炭素社会の切り札になる

ペロブスカイト太陽電池は日本発の技術であり、主原料であるヨウ素の生産量で日本は世界第2位を誇ります。

シリコンパネルのサプライチェーンが海外に偏っている現在、この技術の実用化は日本のエネルギー自給率向上と製造業復活の試金石ともいえます。

建材と一体化するBIPVとしての普及が進めば、オフィスビルの窓ガラスや工場の屋根、駅のホームまで、あらゆる建造物が発電所に生まれ変わります。

災害時の通信基地局や避難所としてのレジリエンス向上にも貢献するでしょう。

軽量・柔軟・高効率を兼ね備えたペロブスカイト×BIPVは、まさに日本のカーボンニュートラル社会を実現するための切り札です。

建設業界に携わる方は、今のうちからこの技術動向を把握し、施主への提案に活かしていくことをおすすめします。

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