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ペロブスカイトとシリコンの比較|効率・重量・寿命の違いを解説

ペロブスカイト太陽電池が実用化に近づき、施主から従来のパネルとどう違うのかと質問される機会が増えています。

軽くて安いという評判が先行していますが、実際にどの項目でシリコンを上回り、どの項目で及ばないのかを整理して答えられる担当者は多くありません。

この記事ではペロブスカイトと結晶シリコンの違いを5つの項目で比較し、いま住宅に採用すべきなのはどちらか、施主にどう説明すればよいのかまでを解説します。

こちらの記事はこのような方におすすめです
  • ペロブスカイトとシリコンの違いを整理して知りたい
  • 変換効率や重量、寿命が具体的にどれくらい違うのかを知りたい
  • ペロブスカイトが次世代の本命と呼ばれる理由を知りたい
  • 施主にペロブスカイトを待つべきかと聞かれたときの答え方を知りたい

ペロブスカイト太陽電池と結晶シリコン太陽電池の違い

ペロブスカイト太陽電池と結晶シリコン太陽電池の違い

ペロブスカイト太陽電池と結晶シリコン太陽電池の違いについて解説します。

ペロブスカイト太陽電池と結晶シリコン太陽電池の違い
  • ペロブスカイト太陽電池とは
  • 結晶シリコン太陽電池とは
  • 発電層に使う材料と製造方法の違い
  • ペロブスカイト太陽電池の3つの種類

ペロブスカイト太陽電池とは

ペロブスカイト太陽電池は、2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が発明した日本発の技術です。

ペロブスカイト材料を基材へ塗布して成膜できるため、シリコン太陽電池より低温かつ少ない工程で製造できる可能性があります。

最大の特徴は薄さと軽さです。

発電層の厚みはわずか1ミクロン程度で、フィルム型なら製品全体でも1ミリメートルほどに収まります。

さらにペロブスカイト太陽電池は曲げられる特性があり、今まで設置が難しかった場所にも設置できる可能性がある点も注目されています。

結晶シリコン太陽電池とは

結晶シリコン太陽電池は、現在世界の太陽電池市場の約9割を占める主流技術です。

けい砂から取り出したシリコンを高温で溶かして結晶に育て、薄く切り出したものを発電層に使います。

50年以上にわたって改良が重ねられてきた技術であり、性能も価格も安定しているのが強みです。

住宅用として量産されている製品は変換効率20%を超えるものが主流となっています。 

一方で理論上の限界は29.4%とされており、単体での効率向上はすでに頭打ちに近づいているのが実情です。

発電層に使う材料と製造方法の違い

両者の差を一言でまとめると、育てるシリコンと塗るペロブスカイトという違いになります。

シリコンは1,000度を超える高温で結晶を育てる必要があり、大がかりな設備と大量のエネルギーを消費します。 

対してペロブスカイトは、塗料のような材料を基材に塗って乾かす低温プロセスで製造できます。 

フィルムをロールで送りながら連続生産できるため、量産体制が整えば製造コストを大きく下げられる可能性があるといえるでしょう。

この製造方法の差が、後述する重量やコストの違いをすべて生み出しています。

ペロブスカイト太陽電池の3つの種類

ペロブスカイトと一括りにされがちですが、実際には基材と構造によって3つのタイプに分かれます。

種類特徴主な用途
フィルム型樹脂フィルムに塗布。軽くて曲がる耐荷重の低い屋根、曲面
ガラス型ガラス基板に塗布。透明にもできる窓、壁面などの建材一体型
タンデム型シリコンの上に重ねて積層高効率が求められる用途

タンデム型はペロブスカイトとシリコンを重ねる構造で、それぞれが異なる波長の光を吸収するため効率が跳ね上がります。 

つまりペロブスカイトはシリコンを置き換えるだけの技術ではなく、シリコンと組み合わせて性能を引き上げる使い方も想定されています。

ペロブスカイトとシリコンを5項目で比較

ペロブスカイトとシリコンを5項目で比較

ここからは実務で判断材料になる5つの項目で両者を比べていきます。

まず全体像を表で確認しておきましょう。

項目ペロブスカイト結晶シリコン
変換効率(実用品)15%程度20%超が主流
重量1〜4kg/㎡11〜13kg/㎡
耐用年数10年程度20〜25年
主原料ヨウ素(日本が世界シェア約30%)けい砂
施工方法貼り付け(架台不要の工法あり)架台を組んで固定

変換効率の比較

現時点で実際に販売されている製品どうしを比べると、変換効率はシリコンが上回っています。

国内メーカーとして初めて発売された積水ソーラーフィルムのフィルム型製品『SOLAFIL』は、発電効率15%・耐久性10年という仕様です。(参考:積水化学工業系、ペロブスカイト太陽電池の販売を開始 – 日本経済新聞

住宅用シリコンパネルは20%を超える製品が主流で、同じ屋根面積なら発電量に3割前後の差が出る計算になります。

重量と設置できる場所の比較

重量はペロブスカイトが圧倒的に有利です。 

シリコン系のパネルが1平方メートルあたり11〜13kgあるのに対し、フィルム型ペロブスカイトは1〜4kg程度と大幅に軽くなります。

この差が意味するのは、設置できる場所が広がるということです。 

築年数の経った建物や、金属屋根のように耐荷重に余裕のない屋根、さらには壁面や曲面にも載せられます。

 実際に『SOLAFIL』も、耐荷重の低い工場や学校の屋根を主な設置対象として販売が始まりました。

住宅においても、重いパネルを載せることによる重心の上昇を避けられる点は耐震面での利点になります。

耐用年数と耐久性の比較

耐久性は現時点でシリコンが明確に上です。 

市場に出回っているシリコンパネルの寿命は一般に20〜25年とされているのに対し、ペロブスカイトの現行製品は10年程度といわれています。

これはペロブスカイトの結晶が紫外線や水分に弱いという材料特性によるものです。 

開発当初は5年程度とされていた寿命が10年まで延びてきた経緯があり、積水化学は20年相当の耐久性を目標に掲げています。 

とはいえ20年以上の実績を積み重ねてきたシリコンとの差は、現時点では埋まっていません。

住宅用太陽光の投資回収は10年以上を前提に設計されるため、耐用年数10年という水準は住宅にとって不十分であることは押さえておくべきポイントです。

コストと原料調達の比較

原料調達の面ではペロブスカイトに大きな強みがあります。 

主原料のヨウ素は日本の生産量が年1万トン程度でチリに次ぐ世界2位、シェアは約30%を占めており、埋蔵量では世界トップクラスです。

国内の約8割が千葉県で生産されており、原料を輸入に頼らずに済む点は経済安全保障の観点からも評価されています。

一方、現時点の価格ではシリコンが優勢です。

経済産業省の調達価格等算定委員会によると、2025年に新築住宅へ設置されたシリコン太陽光のシステム費用は平均28.9万円/kWです。

対してペロブスカイトは製品の価格が非公表で、量産規模もまだ小さいため、現段階では比較できる相場が存在しませんが、現時点での製造インフラの関係上、ペロブスカイトの方が高額になる可能性が高くなっています。

施工方法の比較

シリコンパネルは屋根に架台を組み、そこに固定していく施工が基本です。 

架台と金具の分だけ屋根への荷重が増え、屋根材への穴あけが必要になる工法もあります。

フィルム型ペロブスカイトは屋根に直接貼り付ける工法が想定されており、架台をほとんど使わないタイプなら製品全体で3kg/㎡以下に抑えられます。 

ただし軽ければ工事が不要になるわけではありません。 

足場の設置、配線や電気工事、防水処理といった作業は従来どおり発生するため、施工費が劇的に下がるとまでは言えないでしょう。

ペロブスカイト太陽電池が次世代の本命と呼ばれる理由

ペロブスカイト太陽電池が次世代の本命と呼ばれる理由

現行製品の性能はシリコンに及ばないにもかかわらず、ペロブスカイトが本命と呼ばれるのはなぜでしょうか。

その理由は4つあります。

ペロブスカイト太陽電池が次世代の本命と呼ばれる理由
  • 主原料のヨウ素を国内で調達できる
  • 耐荷重の低い屋根や壁面にも設置できる
  • タンデム型ならシリコン単体の効率を大きく上回る
  • 国が導入目標と補助制度で普及を後押ししている

主原料のヨウ素を国内で調達できる

日本の太陽光産業はこれまで、原料や部材の多くを海外に依存してきました。 

シリコンパネルの生産も中国勢が席巻し、国内メーカーは撤退が相次いだ経緯があります。

ペロブスカイトが違うのは、主原料を自国でまかなえる点です。 

ヨウ素で世界シェア約30%を握り、埋蔵量では世界一という立場は、価格競争でも供給安定性でも有利に働きます。 日本が主導権を取り戻せる数少ない分野として、国が本腰を入れているのはこのためです。

耐荷重の低い屋根や壁面にも設置できる

日本国内で太陽光を増やそうとしたとき、平地に置く大規模発電はすでに景観や災害リスクの面で反発を受けています。 

残されたポテンシャルは建物の屋根や壁面ですが、既存建物の多くは重いパネルを載せられません。

重量が10分の1のペロブスカイトなら、この制約を一気に外せます。 

工場や倉庫の金属屋根、体育館、ビルの壁面や窓といった未活用のスペースを発電所に変えられる点が、政策的に強く期待されている理由です。

タンデム型ならシリコン単体の効率を大きく上回る

ペロブスカイトはシリコンの代替品としてだけでなく、性能を底上げする素材としても価値があります。 

ペロブスカイトとシリコンを重ねたタンデム型の理論限界は43%とされ、シリコン単体の29.4%を大きく上回り、2026年7月には、認証済みのセルで変換効率35.5%が記録されています。

限られた屋根面積でより多くの電気をつくれるという意味で、狭小地の住宅にとっても将来的な恩恵は小さくないでしょう。

国が導入目標と補助制度で普及を後押ししている

政府は2024年11月に『次世代型太陽電池戦略』をまとめ、2040年に国内で約20GWの導入を目指す方針を掲げました。 

発電コストについても、2030年までに14円/kWh、2040年には自立化が可能な10〜14円/kWhという段階的な目標が設定されています。

また、支援が充実している点も覚えておきましょう。

グリーンイノベーション基金では積水化学工業、エネコートテクノロジーズ、カネカ、東芝、アイシンの5社が開発に取り組んでおり、2026年6月には政府施設へ2040年度までに100MW以上を導入する目標も示されました。 

需要と供給の両面から市場を立ち上げる体制が組まれている点が、過去の次世代技術との違いといえるでしょう。

ペロブスカイト太陽電池のデメリットと現時点の課題

ペロブスカイト太陽電池のデメリットと現時点の課題

期待の一方で、住宅に採用するには解決すべき課題が残っています。 施主に正確に説明するため、4つの論点を押さえておきましょう。

ペロブスカイト太陽電池のデメリットと現時点の課題
  • 耐用年数がシリコンに及ばない
  • 鉛を使用する製品が主流である
  • 住宅向けの市販品がまだ存在しない
  • 価格水準が確定していない

耐用年数がシリコンに及ばない

ペロブスカイト太陽電池の最大の課題は寿命です。

 現行製品の耐用年数は10年程度で、シリコンの20〜25年とは倍以上の開きがあります。

住宅用太陽光は10年以上かけて初期費用を回収する前提で提案するものであり、10年で交換が必要になる製品では収支計算が成り立ちません。 

20年相当の耐久性が実証され、それに見合う保証が付くまでは主力のエネルギー供給源としては利用しにくいでしょう。

鉛を使用する製品が主流である

現在実用化されているペロブスカイト太陽電池は、発電層にヨウ化鉛を使っています。 鉛は人体に有害な物質であり、破損時や廃棄時の扱いについて懸念が示されてきました。

鉛を使わない材料の研究は国内外で進んでいるものの、鉛フリー品は変換効率が大きく落ちるという課題を抱えています。 

住宅の屋根に載せる以上、施主から必ず問われる論点になるため、現状を正確に伝えられるようにしておきましょう。

住宅向けの市販品がまだ存在しない

2026年7月時点で、一般住宅の屋根に載せられるペロブスカイト製品は市販されていません。 

積水ソーラーフィルムの『SOLAFIL』は環境省の導入支援事業に採択された自治体や東京都の公共施設が対象で、住宅向けの展開時期は公表されていない状況です。

供給量もまだ限られています。 同社は2026年度を現有設備による限定的な生産量と位置づけ、2027年度に大阪府堺市で100MW規模の生産ラインを立ち上げることを最優先課題としています。

つまり住宅市場に製品が回ってくるのは、公共施設や産業用の需要を満たした後になります。

価格水準が確定していない

『SOLAFIL』の価格は非公表であり、住宅用として販売されたときにいくらになるのかは誰にもわかりません。 

一般に新技術は導入初期ほど割高になるため、当初はシリコンより高くなる可能性も十分にあります。

安くなるという評判は、あくまで年産1GW級の量産が実現した後の見通しです。 

現時点で価格メリットを前提に提案するのは避けるべきでしょう。

施主に「ペロブスカイトを待つべきか」と聞かれたときの答え方

施主に「ペロブスカイトを待つべきか」と聞かれたときの答え方

太陽光発電に関心の高い施主であれば、ペロブスカイト太陽電池の有用性を理解しており、実用化を待つべきかと質問してくる場合もあるでしょう。

その場合になんと答えるべきなのかを解説します。

施主に「ペロブスカイトを待つべきか」と聞かれたときの答え方
  • 今建てる住宅ならシリコン一択である理由
  • 待つことで生じる機会損失を数字で説明する
  • 将来の技術更新を前提とした提案の組み立て方
  • 費用がネックの施主には太陽光リースという選択肢がある

今建てる住宅ならシリコン一択である理由

いま新築する住宅に載せるならシリコン以外の選択肢はありません。 

理由は単純で、住宅用のペロブスカイト製品がそもそも売っていないからです。

仮に近い将来に発売されたとしても、耐用年数10年・価格未定・住宅での実績ゼロという条件では提案できません。

 一方でシリコンは20年以上の実績があり、価格相場も保証内容も明確です。 検討の土俵に上がっていない技術と比較する必要はない、という説明が最も納得を得やすいでしょう。

待つことで生じる機会損失を数字で説明する

待つという判断には目に見えないコストがかかります。 

国が価格算定に用いている想定値をもとに、4kWのシステムを載せた場合の1年あたりの効果を試算してみましょう。

項目数値
年間発電量(設備利用率13.7%)約4,800kWh
売電収入(余剰70%・24円/kWh)約8万円
電気代削減(自家消費30%・27.31円/kWh)約3.9万円
運転維持費(0.30万円/kW/年)約1.2万円
差引の年間メリット約11万円

※経済産業省『令和8年度以降の調達価格等に関する意見』の想定値をもとにした試算であり、屋根条件や電気の使い方によって変動します。

この条件では、5年間で約49万円の便益を先送りする計算になります。

しかもFITの買取価格は運転開始から4年目までが24円/kWhで、5年目以降は8.3円/kWhに下がる仕組みです。 

制度が手厚いうちに始めたほうが有利であることを数字で示すと伝わりやすくなります。

将来の技術更新を前提とした提案の組み立て方

ペロブスカイトに関心を持つ施主には、いま載せるか将来載せるかの二択で考えないよう促すのが有効です。

太陽光パネルは屋根に固定された設備であり、将来的に載せ替えることも増設することもできます。

屋根の南面にシリコンを載せておき、ペロブスカイトが実用水準に達した段階で北面や壁面に追加するという組み合わせも成り立ちます。

むしろ将来の増設を見越して、パワーコンディショナの容量や配線ルートに余裕を持たせた設計にしておくことが、工務店として提示できる付加価値になるでしょう。

費用がネックの施主には太陽光リースという選択肢がある

施主の「ペロブスカイトの実用化を待ちたい」という言葉の裏に、初期費用への抵抗が隠れているケースは少なくありません。

シリコンでも4kWで約116万円の負担になるため、建築費が高騰しているなかでこれを上乗せするのは簡単な判断ではないためです。

その場合に有効なのが太陽光リースです。 

月額定額で設備を利用する仕組みのため、初期費用がかからず住宅本体価格にも上乗せされません。

発電した電気はすべて施主のものになるので、電気代削減の効果もそのまま受け取れます。 

まとめ

ペロブスカイトとシリコンの比較を整理すると、優劣は項目ごとに分かれます。 

重量と原料調達ではペロブスカイトが大きく上回り、変換効率・耐用年数・実績ではシリコンが上回るという構図です。

ただし住宅への採用という一点に絞れば、答えは明確といえるでしょう。

 住宅向けのペロブスカイト製品は2026年7月時点で市販されておらず、現行品の耐用年数10年では投資回収の前提が成り立ちません。 

いま建てる住宅にはシリコンを選び、将来の増設余地を設計に織り込んでおくのが現実的な判断です。

費用面がネックであれば、初期費用ゼロで始められる太陽光リースという選択肢もあります。

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