「屋根にパネルを載せるスペースがない」
「重量が不安で古い建物には設置できない」
こうした課題を解決するのが塗る太陽電池と呼ばれるペロブスカイト太陽電池です。
従来のシリコン型パネルでは難しかった軽量・柔軟な形態を実現し、外壁や窓ガラスにまで発電機能を持たせることが可能になりました。
この記事では、塗る太陽電池とも呼ばれるペロブスカイト太陽電池の概要や特徴、そして工務店営業が知っておくべき活用方法まで紹介しています。
目次
塗る太陽電池とは?

従来のシリコン型太陽電池は「屋根に重いパネルを並べる」という設置形態が主流でした。
しかし近年、ペロブスカイト材料を用いた塗る太陽電池が登場し、外壁や窓ガラスなどにも発電機能を付加できるようになってきています。
ここでは、その仕組みや開発の歩み、そして注目される背景を整理します。
仕組みと従来型太陽電池との違い
塗る太陽電池は、ペロブスカイトと呼ばれる特殊な結晶構造をもつ材料を使った次世代太陽電池です。
従来のシリコン型が高温処理と大型設備を必要とするのに対し、低温での塗布や印刷で製造できる点が大きな違いです。
これにより軽量で柔軟なフィルム状に加工でき、外壁や窓など多様な建材と一体化できる太陽電池として注目されています。
研究・開発の歴史
2009年に日本の研究者が初めて発明したペロブスカイト太陽電池は、当初は変換効率の低さと耐久性の不足が課題でした。
しかしその後の改良で性能は急速に向上し、単体セルでは26%超、シリコンとの積層型では34%以上の記録も報告されています。
従来の太陽光パネルの発電効率が20〜22%とされているため、この数値はかなり高いです。
現在は実用段階への研究や実験が進んでおり、2025年には積水化学工業が世界初の量産工場を発表し、商用化が現実的な段階へと進んでいます。
注目される背景
脱炭素化を目指す政府の方針に加えて、従来の太陽光発電には「設置場所が限られる」「重量負担が大きい」といった課題がありました。
一方で塗布型のペロブスカイト電池は軽量で設置自由度が高く、さらに製造コストがシリコン型の1/3〜1/5に抑えられる可能性も示されています。
住宅やビルの外装全体を発電面に変えることができるこの技術は、エネルギー自給のあり方を根本から変えるものとして注目を集めています。
ペロブスカイト太陽電池の特徴

塗る太陽電池が注目される理由は、ペロブスカイト材料が持つ特有の性質にあります。
どうしてペロブスカイト太陽電池は塗ることができるのか、その理由や特徴を解説します。
塗布型にできる理由
ペロブスカイトは液体インクのように溶液化でき、100℃前後の低温で結晶化します。
そのため、シリコンのように高温で溶かして固める必要がなく、ガラスやフィルムの上に塗る、印刷するという工程で発電層を作れます。
その結果、厚さ0.03mm程度のフィルム状に加工でき、ガラスやプラスチックに貼り付けて利用可能です。
重量はシリコン型の1/25程度とされ、耐荷重に制約がある建物や曲面にも設置できる柔軟性を備えています。
これにより、建物の壁や窓ガラスに塗るように設置することができます。
変換効率と寿命の現状
ペロブスカイト太陽電池は発電効率が従来型に比べて低いとされてきましたが、近年の研究では発電効率も上がってきています。
たとえば、単体のペロブスカイト電池では発電効率26%、シリコンと重ね合わせたタイプでは34%以上という数値です。
従来型の太陽光発電パネルの発電効率は20〜22%程度とされており、研究段階でそれを上回る数値が出ているということになります。
一方で、課題は耐久性にあります。
湿気や熱に弱く、20年以上の寿命が実証されているシリコン型に比べると、寿命についてはまだ研究途上です。
ただし、積水化学やキヤノンが封止技術を進めることで、30年相当の寿命を目指す取り組みも始まっています。
他の太陽電池との性能比較
現在の主流であるシリコン型太陽電池は、20〜22%ほどの発電効率を安定して出せます。
ペロブスカイト型は、まだ開発途中にもかかわらず、すでにその水準に迫る性能を記録しています。
しかも重さはシリコン型の約1/25と非常に軽く、製造コストも3分の1〜5分の1に抑えられる見込みです。
さらに曇り空や室内光といった弱い光でも発電しやすいため、天候に左右されにくい点も大きな特長です。
塗る太陽電池はどのように活用できるのか

ペロブスカイト太陽電池は、従来の屋根上パネルだけにとどまらず、建物や生活空間のあらゆる場所に発電機能を広げられる点が特徴です。
具体的にどう活用できるのかを説明します。
住宅やビルの外壁・屋根への塗布
ペロブスカイト太陽電池はフィルム状に加工でき、それを外壁や屋根全体に塗ることで、建物自体を発電装置にできます。
従来は重量制限で太陽光導入が難しかった古い建物や体育館などにも設置でき、リフォーム分野での活用が期待されます。
意匠性を保ったまま発電機能を付加できるため、デザイン性を重視する都市部のビルにも適しているといえるでしょう。
窓ガラスや自動車への応用可能性
ペロブスカイト太陽電池は透明化できるため、窓ガラスに組み込むことで「発電する窓」として利用可能です。
室内に光を取り込みつつ発電も行えるため、ビルやマンションのガラス面を有効に活用できます。
また、自動車の屋根やボディに薄膜を塗布することで、走行中や駐車中に発電する仕組みも検討されています。
電気自動車の航続距離延長や空調用電力の補助としての応用が見込めるでしょう。
災害時や仮設住宅での発電利用
ペロブスカイト太陽電池は軽量で持ち運びが容易なことから、災害時の非常用電源としても役立ちます。
シート状の発電材を広げるだけで電力を得られるため、避難所や仮設住宅での電力確保に有効です。
従来型のパネルに比べて設置の自由度が高く、短時間で展開できることから、防災分野でも注目されています。
塗る太陽電池が工務店に与える革新性とは

ペロブスカイト太陽電池は、単なる新技術にとどまらず、工務店の提案力や施工範囲を大きく広げる可能性を秘めています。
従来のシリコン型では実現できなかった発電手法を取り入れることで、差別化や新たな市場開拓が期待できます。
リフォームでの付加価値の提案ができる
塗る太陽電池は、外壁塗装や屋根リフォームのタイミングで同時に導入できるのが大きな魅力です。
単なるメンテナンス工事ではなく、「光熱費削減につながるリフォーム」として顧客に提案できるため、成約率向上にも直結します。
従来のパネル設置が難しい建物でも対応できるため、顧客満足度の高いリフォーム商品として注目されています。
軽量化により施工範囲の拡大
重量は従来型の1/25程度とされ、屋根の耐荷重に制限がある建物や古い住宅にも施工が可能です。
また、曲面や特殊形状の外壁にも柔軟に対応できるため、これまで「設置不可能」と判断されていた案件にも提案の余地が生まれます。
工務店にとっては、施工領域の拡大とともに、新しい収益機会を獲得するチャンスとなるでしょう。
まとめ
ペロブスカイトを用いた塗る太陽電池は、軽量・柔軟・低コストという特性を備え、従来のシリコン型では難しかった応用を可能にしています。
外壁や窓、自動車、さらには災害時の電源まで幅広く活用でき、建築分野における可能性は大きく広がっています。
工務店にとっても、リフォーム提案や新規施工領域の拡大につながる革新的な技術として、今後の注目度はさらに高まるでしょう。
とはいえ、どんなに魅力的な新技術でも、施主にとって最大の不安は「初期費用」や「維持管理の負担」です。
せっかく提案しても、コスト面でハードルが高ければ導入にはつながりにくいのが現実です。
そこで注目されているのが、太陽光リースという仕組みです。
初期投資をゼロにし、月額の利用料で発電メリットを享受できるため、施主にとって導入の心理的ハードルがぐっと下がります。
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