積水化学工業の子会社である積水ソーラーフィルムが、2026年3月にフィルム型ペロブスカイト太陽電池『SOLAFIL(ソラフィル)』の販売を開始しました。
このニュースは、長年研究段階・実証段階と語られてきたペロブスカイトが、ついに商品として市場に出たという意味で、住宅業界にとっても見逃せない節目となります。
工務店の営業担当者の中には、施主から「次世代太陽電池が出るらしいけど、待った方がいいの?」と質問された経験がある方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ソラフィル販売開始の事実関係を整理しつつ、住宅向け展開の見通しと、工務店の営業現場で押さえておくべきポイントをまとめます。
ペロブスカイト太陽電池の概要を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
目次
ペロブスカイト太陽電池『SOLAFIL』が販売開始

国内メーカーによる本格的なペロブスカイト太陽電池の商業販売が、2026年3月に始まりました。
ここでは、積水化学が発表したソラフィル事業の概要、製品スペック、そして従来のシリコン型との違いを整理していきます。
国内メーカー初、2026年3月に事業化を発表
積水化学工業と100%子会社である積水ソーラーフィルム株式会社は、2026年3月27日に、フィルム型ペロブスカイト太陽電池『SOLAFIL』の事業を開始すると発表しました。
積水化学のプレスリリースによると、積水ソーラーフィルムは2025年7月に設立された事業会社で、開発・製造・販売・施工までを一貫して担う体制が整えられています。
国内メーカーによるペロブスカイト太陽電池の本格的な商業販売としては、これが初めての事例です。
これまで日本企業のペロブスカイト関連の発表は、研究開発・実証実験・量産技術確立といった段階のものが中心でした。
そのなかで、製品として注文を受け納品するフェーズに進んだ積水化学の動きは、業界の転換点として位置づけられます。
(参考:フィルム型ペロブスカイト太陽電池「SOLAFIL」事業開始のお知らせ | 積水化学工業株式会社)
SOLAFILの基本スペック
ソラフィルの製品仕様は、これまで報道されてきたペロブスカイト太陽電池の特徴を反映したものとなっています。
主な仕様は次の通りです。
- サイズ:幅1m×長さ1.5m
- 発電効率:約15%
- 耐久性:10年相当
- 製法:ロールtoロール製法
- 基板:樹脂フィルム
- 設置対象:金属屋根
価格については現時点で非公表ですが、生産規模の拡大に伴って段階的に下がっていくことが見込まれています。
なお、発電効率15%という数値は、現在主流のシリコン型太陽電池の20%前後と比較するとやや低い水準です。
ただし、設置できる場所の自由度や軽さといったメリットを踏まえると、シリコン型を補完する電源としての位置づけが見えてきます。
従来のシリコン型と何が違うのか
ソラフィルの最大の特徴はシリコン型太陽電池の約10分の1の重量で、フィルム状で曲げられるという点にあります。
シリコン型のソーラーパネルは、ガラスとアルミ枠で構成されており、1枚あたり15〜20kg程度の重量があります。
そのため、耐荷重が低い屋根や、曲面のある建物には設置できないというのが従来の制約でした。
ソラフィルのようなフィルム型ペロブスカイトであれば、この制約を超えて、これまで太陽光発電を諦めていた建物にも導入できます。
業界では、この変化を置く太陽光から貼る太陽光へと表現しています。
工場・倉庫・体育館・物流施設など、シリコン型では設置が難しかった建物が、新たな発電場所として開拓されていく流れです。
ソラフィルの初期供給先は自治体・公共施設!
ソラフィルの初期供給先は、原則自治体や公共施設です。
初期供給先の具体例と、なぜ住宅用途ではなく金属屋根からスタートしたのかという理由を整理していきます。
環境省の導入支援事業で採択された自治体・事業者が対象
ソラフィルの初期供給先は、環境省のペロブスカイト太陽電池導入加速化支援事業で採択された自治体や事業者です。
具体的には、さいたま市、滋賀県、西日本高速道路、福岡県、福岡市が初期の導入先として公表されています。
これに加えて、東京都が独自に進める都有施設へのAirソーラー先行導入事業もソラフィルを採用しており、官公庁・公共施設での導入が先行する形となっています。
これらの初期供給先は、いずれも金属屋根への設置が前提となっています。
体育館、倉庫、駅舎、庁舎の屋根など、シリコン型では設置が難しかった金属屋根に、ソラフィルが活用されていく流れです。
なぜ住宅用途ではなく金属屋根からなのか
施主や住宅会社の立場からすると、なぜすぐに住宅に使えないのかという疑問が浮かぶかもしれません。
理由は大きく3つあります。
- 耐久性の課題
- 生産量の制約
- 設置仕様の確立
まずソラフィルの太陽性能は10年相当とされており、25年以上の長期運用が前提とされる住宅用太陽光発電システムには、まだ性能が追いついていません。
そこで、まずはお試しとしても短期間での交換が前提となっている自治体や事業者への販売が先行しました。
2つ目は生産量の制約です。
事業開始時点ではまだ生産能力が限られており、まずは1件あたりの導入量が大きい公共施設に優先的に供給される形となっています。
3つ目は、設置仕様の確立です。
金属屋根への設置方法は実証実験で先行して確立されており、住宅用の瓦屋根や複雑な形状の屋根への設置仕様は、これからの開発課題となっています。
つまりソラフィルは、シリコン型が入り込めなかった耐荷重の低い工場・倉庫・学校屋根をまず狙う戦略を取っているといえるでしょう。
住宅用途への展開は、これらの先行導入で実証データを積み上げた次のステップとなっていくはずです。
2026年度は約10MW、2027年度に100MW規模生産ラインへ
積水化学は、ソラフィルの生産体制についても具体的な計画を公表しています。
2026年度は現有設備での生産となり、規模は約10MW程度です。
これに対し、2027年4月には、シャープ堺工場の建屋を取得して立ち上げる100MW規模の量産ラインが稼働する予定となっています。
さらに2030年までに1GW級の生産体制を構築する投資計画も明らかにされており、本格的な量産化への道筋が見えてきました。
供給量が10MWから100MW、そして1GWへと拡大していく過程で、住宅用途への展開条件が整っていきます。
供給量が増えれば価格も下がり、設置仕様の標準化も進むため、住宅市場への参入は2027年以降に本格化すると見られています。
工務店にとってペロブスカイト太陽電池の販売開始が持つ意味

ソラフィルが直接住宅市場に投入されるわけではないとしても、このニュースは工務店・住宅会社にとって重要な意味を持ちます。
ここでは、住宅向け実用化への布石、施主からの質問への応対方法、業界動向把握の重要性という3つの視点で整理します。
住宅向け実用化への布石
積水化学のソラフィル販売開始は、ペロブスカイト太陽電池の住宅向け実用化に向けた重要な布石となります。
国内メーカーの動きを並べると、業界全体のタイムラインが見えてきます。
- 積水化学:2026年3月にソラフィル販売開始、2027年4月に100MWライン稼働
- パナソニックHD:2026年に建材一体型のテストマーケティング開始予定
- エネコートテクノロジーズ:2025年から工場建設、2027年に本格稼働見込み
- カネカ:2026年から建材一体型・窓壁面設置型の実証開始
このように、各社の動きが2026年から2027年にかけて集中しており、ペロブスカイト太陽電池の本格普及のタイムラインが具体化しつつあります。
住宅向け実用化は2028年以降に本格化すると見られており、工務店としては、この流れを今のうちに把握しておくことが重要です。
施主から「ペロブスカイトを待ってから検討したい」と言われ場合の対応
ソラフィル販売開始のニュースを受けて、施主から「ペロブスカイトが出るなら、それを待ってから太陽光を検討したい」という声が出ることが予想されます。
このときの応対方針として、いくつかの事実を押さえておくと安心です。
まず、住宅向けのペロブスカイト太陽電池は、現時点では販売されていません。
住宅向け実用化が本格化するのは早くても2028年以降と見込まれており、その時点でも価格が現在のシリコン型より安くなる保証はありません。
さらに、耐久性も10年相当からのスタートであり、シリコン型の25年以上という実績を超えるには、長期間の実証データの積み上げが必要です。
これらを踏まえると、待つ合理性は薄いというのが客観的な判断材料となります。
特に0円リースなどの方法であれば、施主の初期費用負担なく現行のシリコン型を導入でき、毎月の電気代削減を即座に実現できます。
数年後に出るかもしれない技術を待って毎月の電気代を払い続けるよりも、今ある選択肢を活用する方が合理的です。
次世代技術への動向把握が提案力になる
工務店の営業担当者にとって、次世代技術の動向を押さえておくことは大きな提案力につながります。
ペロブスカイトの実用化ニュースは、テレビや新聞でも取り上げられる機会が増えており、施主の関心も高まっているからです。
このときに「まだ実証段階で」と答えるよりも、実際に販売開始された商品についても説明できれば、施主も実用化への具体的なイメージが湧くはずです。
記事中で紹介したソラフィルについても知識も合わせて、施主に話ができるようにしておきましょう。
ペロブスカイト太陽電池の販売開始から見る今後の展望

ここまで現状の動きを整理してきましたが、最後にペロブスカイト太陽電池の今後の展望を3つの視点で見ておきます。
国産エネルギー源としての政策的な後押し
ペロブスカイト太陽電池が国策として位置づけられている最大の理由は、主原料のヨウ素を国内で安定供給できるからです。
日本のヨウ素生産量は世界第2位で、千葉県の南関東ガス田で天然ガスとともに採取されています。
政府もこの点を重視しており、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業を通じて、開発支援を行っています。
環境省もペロブスカイト太陽電池の導入加速化支援事業を展開しており、自治体や事業者への補助金を通じて初期市場の立ち上げを後押ししている状況です。
残された課題
順調に見えるペロブスカイト太陽電池ですが、本格普及に向けて残された課題もあります。
先述した耐久性は、住宅用の太陽光発電への導入の課題となっています。
また、鉛含有材料の管理も問題です。
ペロブスカイト太陽電池には微量の鉛が含まれており、廃棄時のリサイクル体制や環境管理ルールの整備が必要となっています。
3つ目は『バンカビリティ』と呼ばれる概念です。
これは金融機関が融資判断をおこなう際の信頼性を示す言葉で、まだ新製品であるペロブスカイトは大規模プロジェクトへの融資がつきにくく、開発や実証に向けての資金調達がしにくいのも問題です。
これらの課題は、施主からペロブスカイトの何が問題なのかと聞かれたときの説明材料として知っておくと役立ちます。
住宅向け展開も近い可能性
ペロブスカイトの開発にはさまざまな課題もありますが、住宅向けの展開は近いと思われます。
積水化学が2027年に100MWライン稼働、2030年に1GW級体制という生産計画を公表していることから、供給量の制約は数年以内に解消される見通しです。
価格についても量産化が進めばシリコン型と同等以下になる可能性が高く、軽量・柔軟という特徴を活かして、これまで太陽光を諦めていた住宅にも導入できるようになる流れが期待されます。
工務店営業としては、2027〜2028年頃を目安に、ペロブスカイト太陽電池の住宅向け製品が登場する可能性を視野に入れておくと良いでしょう。
まとめ
積水化学のソラフィル販売開始は、ペロブスカイト太陽電池が研究段階から商品へと進んだ歴史的な節目です。
ただし、現時点での販売対象は金属屋根を持つ自治体・公共施設であり、住宅向け実用化は2028年以降に本格化する見通しとなっています。
工務店の営業担当者にとって重要なのは、施主から次世代技術について質問された際に、客観的な事実をもとに説明できる準備をしておくことです。
ソラフィルという商品が販売開始されたが、住宅用にはまだ時間がかかる、今は0円リースなどを活用してシリコン型で電気代削減を実現する方が合理的という説明ができれば、施主の信頼を得ながら太陽光提案を進められます。
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