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建設業の入札は“点数”で決まる|経審P点・発注者別評価を高める加点項目8つと改善ポイント

建設業の入札は“点数”で決まる|経審P点・発注者別評価を高める加点項目8つと改善ポイント

公共工事の競争参加資格やランク付けは、経営事項審査(経審)の総合評定値(客観点)と、発注者別評価点(主観点)を合計した点数をもとに決められるケースが多いです。

そのため、加点項目にしっかり取り組む会社ほど落札率が高まります。
加点項目にはISO認証、人材育成、働き方改革などが含まれ、いずれも会社の基盤強化と直結する内容であることが特徴です。

本記事では、経審・主観点の両面を強化しながら、同時に会社が成長していくための取り組みを解説します。

公共工事の入札は「点数」で決まる

経審と発注者別評価点の総合点が高い会社ほど落札の可能性が高くなります。

公共事業の入札は点数で決まる
【引用】経営事項審査の改正の方向性について|国土交通省

評価項目には、品質管理、人材育成、労働環境の改善など、社会的要請に応える会社ほど高得点になる項目が多いことが特徴です。

また、近年では、単に工事成績だけでなく、地域貢献や持続可能性への姿勢も評価対象として重視される傾向が強まっています。

建設業の入札で押さえるべき主な加点項目8つ

公共工事の入札における加点項目は、会社の評価を左右する重要な指標です。
特に中小建設会社では、これらの取り組みが 経審(W点)や発注者別評価で直接加点につながり、同時に社内体制の強化にもなる というメリットがあります。
ここでは代表的な 8 つの加点項目を紹介します。

ISO9001(品質)

ISO9001は、品質マネジメントに関する国際規格です。
取得企業は「品質管理体制が整っている」と評価され、経審のW点で加点されます。

現場の管理方法や記録の保存ルールが改善され、施工品質の安定化にもつながる点が大きなメリットです。

ISO14001(環境)

ISO14001は、環境配慮に関する国際規格です。
環境負荷の低減、汚染予防の取り組みなどが評価され、こちらも経審W点で加点対象となります。

建設現場の環境対策レベルの“見える化”につながり、公共工事での信頼性を高める効果もあります。

エコアクション21

エコアクション21は、ISO14001より導入のハードルが低く、中小企業でも取り組みやすい環境認証です。
経審W点において3点加点されます。

環境関連の取り組みを初めて制度化したい企業の“入口”として多く採用されている点が特徴です。

くるみん・えるぼし・ユースエール

「くるみん」「えるぼし」「ユースエール」は、いずれも厚生労働省が認定する制度で、働きやすい職場づくりに取り組む企業を見える化する仕組みです。

これらの認定を取得すると、経審における加点が得られるだけでなく、「若手や女性が安心して働ける会社」というメッセージを対外的に発信できます。求人票や自社サイト、説明会資料などでロゴマークを活用すれば、他社との差別化にもつながります。

建設業のように人材確保が難しくなっている業界では、単なる加点要素にとどまらず、採用・定着の強力な武器になるでしょう。

健康経営優良法人

多くの自治体で、発注者別評価の加点対象となっています。
健康診断の受診促進、職場の健康環境整備など、従業員の健康管理に積極的な企業が認定されます。

従業員定着や採用面でプラスに働くため、建設業界でも取得企業が増えています。

賃上げ

総合評価落札方式で加点される項目です。
賃上げを実施した企業は評価されますが、達成できなかった場合は減点される点に注意が必要です。

労働環境改善とセットで取り組むことで、企業イメージや採用力向上にもつながります。

建設キャリアアップシステム(CCUS)

建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用状況に応じて、経審で最大15点の加点があります。

  • 全工事で活用:15点
  • 公共工事で活用:10点

技能者の実績管理が正確になるため、若手の育成やキャリア形成にも役立つ仕組みです。

「技能を大切にする企業の自主宣言」(予定)

国土交通省が導入を予定している新しい加点項目です。
宣言を行うことで経審W点において5点が加点される見込みです。

技能者の処遇改善や育成姿勢を示す制度として、今後は企業評価の重要な指標となる可能性があります。

経審の基本|総合評定値(P点)の仕組み

経審は「経営状況」「技術力」「社会性」などを数値化し、P点として算出します。

特に中小企業にとって効果が高いのがY点(財務)とW点(社会性)。
W点は取り組み次第で加点幅が大きく、自社努力で伸ばしやすい領域です。

経審の点数を上げるポイント

  • 借入金の削減
  • 受取利息の適切な科目計上
  • 監理技術者講習の登録漏れ防止
  • 資本性借入金の活用(2025年7月〜)

「財務改善でY点を伸ばし、認証・制度活用でW点を積み上げる」という二軸の戦略が、中小建設会社には最も再現性の高い方法といえます。

経審の基本|総合評定値(P点)の仕組み

経営事項審査(経審)は、建設会社の経営状態・技術力・社会性などを数値化し、総合評定値(P点)として算出する仕組みです。
このP点は、公共工事の入札参加資格にも影響する重要な指標であり、企業の信頼性を客観的に示す“評価スコア”といえます。

中小建設会社にとっては、改善可能な領域が多く、戦略的に取り組むことで大きく伸ばせる評価項目です。

総合評定値(P点)の計算方法

P点は、次の5つの項目の点数にウェイトを乗じたものを合算して算出します。

経審の総合評定値(P点)の計算方法 
【引用】経営事項審査の改正の方向性について|国土交通省

ここで注目すべきは、Y(経営状況)とW(社会性等)の2つです。
これらは中小企業でも改善しやすく、短期間でP点を引き上げられる“伸びしろの大きい項目”といえます。

経審の点数を上げるポイント

P点を上げるために効果が高い取り組みは次のとおりです。

1. Y(経営状況)の改善

Y点は、自己資本比率や負債比率、利益率など、財務の健全性を示す指標で構成されています。次のような取り組みが有効です。

  • 借入金の計画的な返済
  • 不要な資産の売却や圧縮
  • 利益改善による自己資本の積み増し
  • 高金利の借入から低金利への借換え

こうした取り組みは、経審の点数を上げるだけでなく、資金調達力や銀行からの評価向上にもつながります。結果として、新規設備投資や人材投資を行いやすくなり、会社全体の成長サイクルを回しやすくなります。

2. W(社会性等)の強化

W点は、社会保険の加入状況、安全衛生活動、環境対応、人材育成など、会社の「姿勢」が問われる項目です。具体的には、次のような取り組みが加点対象になります。

  • ISO9001・ISO14001の取得
  • エコアクション21の登録
  • くるみん・えるぼし・ユースエールの認定取得
  • 建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用状況
  • 技能者を大切にする企業の自主宣言(予定)

一度にすべてに取り組む必要はありません。自社の課題やリソースに合わせて、
「今年はISO」「来年度はくるみん認定の準備」といったかたちで、数年単位の計画を立てて進めると、ムリなくW点を積み上げていくことができます。

発注者別評価点の仕組み

発注者別評価点(いわゆる主観点)は、地方公共団体が独自に設定する評価制度です。
工事成績だけでなく、地域貢献、環境配慮、人材育成などの取り組みが評価されます。

経審(客観点)と異なり、自治体ごとに評価方法が異なる点が特徴です。
総合点(経審+主観点)で入札参加ランクが決まるため、主観点対策も入札戦略に欠かせません。

発注者別評価点の評価項目

評価項目は自治体により異なるものの、“地域の安全と福祉に貢献する企業かどうか”が重視される傾向があります。

経営事項審査と発注者別評価との違い 
【引用】地方公共団体におけるいわゆる主観点の役割について|国土交通省

発注者別評価を上げるポイント

発注者別評価点を高めるために、特に効果が大きい取り組みは次のとおりです。

1. ISO・環境認証を取得する

発注者別評価点を伸ばすうえで、多くの自治体が重視しているのが、品質・環境に関する第三者認証です。代表的なものが、ISO9001(品質)・ISO14001(環境)・エコアクション21です。

これらの認証を取得すると、以下のような効果が得られます。

  • 品質管理や環境対策のルールが明文化され、担当者が変わっても水準を維持しやすくなる
  • 現場の記録や手順が標準化され、事故や手戻りのリスクが減る
  • 入札時に「品質・環境に配慮した会社」として客観的な証拠を示せる

特に中小建設会社では、「現場ごとにやり方がバラバラ」「担当者の経験に頼りがち」といった課題を抱えているケースも少なくありません。認証取得のプロセスを通じて、こうした属人性を減らし、会社としての管理レベルを底上げできることも大きなメリットです。

2. 地域貢献・防災協定の締結

多くの自治体は「地域のインフラを守るパートナー」として、建設会社の地域貢献度を重視しています。具体的には、以下のような取り組みが評価対象になります。

  • 自治体との防災協定の締結
  • 災害発生時の復旧工事への協力実績

防災協定の締結は、単に加点を得るためだけの取り組みではなく、「いざという時に地域を支える会社」としての信頼を高める行為でもあります。自治体側から見ても、顔の見える建設会社が増えることで、災害時の対応力が高まるというメリットがあります。

3. 労働環境の改善

発注者別評価では、単に工事をこなすだけでなく、「人を大切にする会社かどうか」も評価されます。具体的には、以下のような項目が評価対象です。

  • 一般事業主行動計画の届出
  • 長時間労働の是正や休日数の確保
  • 若手・女性社員の採用・育成の取り組み
  • くるみん・えるぼし・ユースエールなどの認定取得

労働環境の改善は、入札での加点だけでなく、採用・定着にも直結します。
例えば、時間外労働の削減や有給休暇の取得促進は、若手や未経験者が「この業界でも続けていけそう」と感じるための重要な要素です。

また、制度面の整備だけでなく、現場管理者の意識や工期設定の見直しなど、現場運営とセットで取り組むことが欠かせません。発注者別評価の視点と、自社の人材戦略の視点を重ね合わせて考えることで、ムダなく効果的な施策に落とし込むことができます。

認証取得・制度対応を進めるうえで活用できる支援サービス

ISO認証(ISO9001・ISO14001)、エコアクション21、くるみん・えるぼし・ユースエール、健康経営優良法人などの取り組みは、入札加点だけでなく、企業の信頼性や採用力の向上にもつながります。ただし、これらの制度は要件や書類、運用のプロセスが複雑で、社内だけで対応するには負担が大きいという声も少なくありません。

こうした背景から、認証取得や制度整備をサポートする外部サービスを活用する建設会社が増えています。
例えば、書類作成のサポート、運用体制づくり、改善ポイントの整理など、必要な部分だけを補えるため、日常業務を担いつつ制度対応を進めたい企業にとって有効な手段です。

その選択肢のひとつとして、株式会社エフアンドエムが提供する各種認証取得支援サービスがあります。
これまでに全国5,000社以上の建設業・製造業・サービス業の企業に対して、ISO・Pマーク・HACCPなどの取得支援を行ってきた実績を持ち、企業規模や課題に応じて取り組みやすいステップに分けて進められる点が特徴です。

書類作成やマニュアル整備などの事務作業をサポートしつつ、できるだけ負担を抑えた運用の仕組みづくりまで対応してくれるため、「人手が足りない」「制度が難しくて手がつけられない」という企業にとって利用しやすいサービスと言えます。

認証取得や制度対応を効率的に進めたい場合や、加点項目の取り組みをどこから着手すべきか迷う場合には、こうした支援サービスを活用することで、負担を抑えながら評価アップにつなげることができます。

また、株式会社エフアンドエムではISO取得や加点項目への対応を検討している企業向けに、無料相談を行っています。制度対応の準備や認証取得の進め方に不安がある場合は、ぜひ下記フォームよりお申し込みください。

※ISO取得支援については、株式会社エフアンドエムが運営するF&M Club会員向けのオプション、または単体での支援として提供。
また、企業規模や業種によって必要な作業や準備が大きく異なるため、費用はすべて「個別見積」でのご案内となります。

まとめ

公共工事の入札では、経営事項審査(経審)のP点と発注者別評価点の総合点が企業評価の中心となります。ISO認証、人材育成、働き方改革、環境配慮、地域貢献などの取り組みは、いずれも加点につながるだけでなく、会社の基盤強化や採用力の向上にも直結します。
特に中小建設会社にとっては、W点(社会性)や主観点の取り組みがスコアを伸ばしやすく、入札戦略における重要な差別化要素となります。

また、これらの制度は要件や書類が複雑なことから、外部の支援サービスを活用することで、日常業務と両立しながら効率的に進めることも可能です。自社に合った取り組みから一歩ずつ着手し、継続的に評価向上を図ることが、安定した受注と企業成長につながります。