太陽光発電の次世代技術として注目を集めるペロブスカイト太陽電池が、ついに実用化段階に突入しています。
本記事では、太陽光導入を検討される営業・技術者・経営者の皆様に向けて、ペロブスカイト太陽電池の基礎知識から主要メーカーの最新動向など実務に役立つ情報をお届けします。
目次
次世代の太陽光「ペロブスカイト太陽電池」とは

ペロブスカイト太陽電池は、「ペロブスカイト」と呼ばれる特殊な結晶構造を持つ材料を用いた次世代太陽電池です。
2009年に日本の研究者によって発明されて以来、その優れた特性により世界中で研究開発が進められています。
従来のシリコン系太陽電池との最大の違いは、製造工程にあります。
シリコン系が1,400℃の高温処理を必要とするのに対し、ペロブスカイト太陽電池は100℃程度の低温で製造可能です。
これにより、プラスチック基板への塗布・印刷による製造が可能となり、フィルム状の軽量パネルを実現できます。
現在の技術レベルでは、単体セルで26.1%、シリコンとの積層型(タンデム型)では34.6%という高い変換効率を記録しており、実用レベルのモジュールでも15~19%程度を実現しています。
住宅用シリコン系の20~22.5%に迫る水準まで到達しており、軽量性と相まって新たな設置機会を創出しています。
ペロブスカイト太陽電池はなぜ注目されているのか

なぜペロブスカイト太陽電池がこれまで注目されているのか、その理由を説明します。
製造コストが大幅に下がる可能性
ペロブスカイト太陽電池の製造コストは、シリコン系の1/3~1/5になると予測されています。
これは100度という低温での製造が可能なため、エネルギーコスト自体が大幅に削減できることが要因となっています。
一般的なシリコン系の太陽光パネルを製造する際に必要な1,400度と比較すると、製造エネルギーは約1/14となっています。
さらに、ペロブスカイト太陽電池の主原料となるヨウ素は日本が世界シェア30%(第2位)を占めており、サプライチェーンの安定性も確保されています。(出典:世界に誇る天然資源 | K&Oヨウ素株式会社)
また、塗布・印刷技術によりシリコン系で必要な大型炉や真空装置が不要で、設備コストも抑えることが可能です。
軽量・柔軟で幅広い場所へ設置可能
ペロブスカイト太陽電池の重量は約1kg/㎡と、シリコン系の約25kg/㎡の1/25という圧倒的な軽さを実現しています。
厚さもわずか0.031mmと、シリコン系の約1/1000という薄さです。
この特性により、以下のような場所への設置も期待されています。
- 耐荷重の低い体育館や古い建物の屋根
- ビルの外壁面や窓ガラス
- カーポートや物置などの軽構造物
- 湾曲した屋根面や特殊形状の建築物
さらに、柔軟性があるため曲面への設置も可能で、建物デザインに合わせた自由度の高い設置が実現できます。
また透明化も可能なため、窓ガラスとしても機能し、建材一体型の新しい太陽光発電システムの実現が期待されている状況です。
エネルギー変換効率の向上
ペロブスカイト太陽電池は、理論的には31%という高い変換効率が期待されています。
また、シリコンとの積層(タンデム型)では、実験室レベルで既に34.6%という世界記録を達成しており、将来的には40%台も視野に入っています。
低照度環境でも発電能力を維持できるため、曇天時や室内照明下でも一定の発電が期待でき、年間を通じた発電量の安定化にも寄与します。
これにより、天候に左右されやすいという太陽光発電の課題を解決できる可能性があるでしょう。
ペロブスカイト太陽電池の開発メーカー一覧

主要なペロブスカイト太陽電池の開発メーカー一覧を紹介します。
積水化学工業
積水化学工業は、2025年1月に新会社「積水ソーラーフィルム」を設立し、世界に先駆けてペロブスカイト太陽電池の事業化を開始しました。
大阪府堺市の旧シャープ工場を取得し、2027年4月から年産100MWの量産を開始、2030年には年産1GW(原発1基相当)まで拡大する計画です。
同社の強みは、液晶封止材技術を応用した独自の耐久性技術にあります。
フィルム型で世界最高水準の大面積変換効率15%を達成し、2025年までに20年相当の耐久性実現を目標としています。
政府から1,572億円の補助金を獲得し、総投資額3,145億円という大規模投資を実行中です。(出典:「薄くて曲がるペロブスカイト太陽電池」で描く、新しい資本主義の勝ち筋 | 積水化学工業株式会社)
東芝
東芝エネルギーシステムズは、2025年3月にペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池で31.3%という世界最高水準の変換効率を達成しました。
この技術は、ペロブスカイト層がシリコン層の上に積層された構造で、それぞれ異なる波長の光を効率的に変換することで高効率を実現しています。
銅酸化物(Cu2O)を用いた透過型タンデム太陽電池でも9.5%の効率を記録し、より豊富で安価な材料による代替技術も開発中です。
これらの技術は、電気自動車への応用も想定されており、現在のタンデムセルで37km、理論値では55kmの走行距離を1回の充電で実現できると試算されています。(出典:ペロブスカイトとシリコンの2端子タンデム型太陽電池でエネルギー変換効率31.3%を実現 | 特集・トピックス)
パナソニック
パナソニックは、厚さ1マイクロメートル未満の超薄型フィルムで18.1%の変換効率を達成し、透明度20%から完全グラデーションまで可変可能な「発電するガラス」を開発しています。
インクジェット印刷技術により、建物デザインに合わせたカスタマイズが可能で、重量は従来の1/10という軽量化を実現しています。(出典:世界初、ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池 Fujisawa サスティナブル・スマートタウン内で長期実証実験を開始)
神奈川県藤沢市のスマートタウンでは、2023年8月から世界初の住宅用長期実証実験を実施中です。
キヤノン
キヤノンは、2024年6月にペロブスカイト太陽電池の最大課題である耐久性問題を解決する革新的コーティング技術を発表しました。
100~200ナノメートルのフタロシアニン系多結晶中間層により、電荷収集とイオン欠陥不活性化を同時実現し、従来は困難だった大面積での安定生産を可能にしています。
この技術は、キヤノンの感光ドラム技術からの意外な派生であり、オフィス機器で培った層構造技術がペロブスカイト応用に直接応用されています。(出典:キヤノンがペロブスカイト太陽電池向けの高機能材料を開発 耐久性と量産安定性の向上に期待)
太陽電池の低コストでの導入を目指すならリース活用も検討

ペロブスカイトはまだ実用段階には至っていませんが、今後家庭への導入も期待されています。
その際には従来型の太陽電池よりも低コストの導入が可能となる可能性もあるでしょう。
最新技術は初期費用が高額になるリスクあり
ペロブスカイト太陽電池は将来的な低コスト化が期待されているものの、実用化初期段階では高額な初期費用が予想されます。
ペロブスカイト太陽電池は新しい技術であり、需給バランスにより価格変動が起きる可能性があるためです。
また、新技術のため故障時の対応やメンテナンス体制の確立が追いつかず、メンテナンスの費用が莫大となる可能性もあるでしょう。
リース方式は初期費用を抑えて導入可能
とはいえペロブスカイト太陽電池に興味をもつ施主は、その低コスト性や性能にも注目しているはずです。
そのような施主に対して太陽電池を提案するには、導入ハードルを下げる太陽光リースがおすすめです。
太陽光リースは初期投資なしで太陽光発電システムを設置でき、リース料にメンテナンス費用が含まれています。
それに加えて電気代削減効果が得られるため、経済的なメリットが大きい方法です。
まとめ
ペロブスカイト太陽電池は、日本発の革新技術として太陽光発電の可能性を大きく広げる存在です。
積水化学工業の量産工場設立を皮切りに、2025年は「ペロブスカイト元年」として歴史に刻まれることでしょう。
軽量性、柔軟性、低コスト化の可能性など、従来技術では実現困難だった特性により、新たな市場機会を創出しています。
しかし、施主への提案においては、技術の成熟度を見極めた現実的なアプローチが重要です。
当面は実績豊富なシリコン系太陽電池をリース・PPAモデルで導入し、初期投資リスクを回避しながら確実な発電メリットを提供することが、施主満足度を最大化する方法といえるでしょう。
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