「RAGTAG」が見据えるファッション業界の未来――一次流通と二次流通がつながり、新たなサプライチェーンを築く

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「RAGTAG」が見据えるファッション業界の未来——一次流通と二次流通がつながり、新たなサプライチェーンを築く

取材・文:杉原由花(POWER NEWS)、写真: 佐坂和也

メルカリに代表されるさまざまな企業の参入により、盛り上がりを見せている二次流通。「RAGTAG」を運営し、アパレル二次流通市場を牽引するパイオニアとして知られるのが「ティンパンアレイ」だ。業績は右肩上がり。大手アパレルメーカー「ワールド」のグループ会社に加わり、さらに勢いが増す同社だが、どのようにしてその地位を築き上げてきたのか。ひたむきにファッションの楽しさ、アパレルブランドの魅力を伝えてきたこれまでについて、桜庭邦洋 WEB事業グループゼネラルマネージャーに語ってもらった。

時代に先駆けて事業をスタートさせ、二次流通市場を牽引

——リユースへの意識の高まりや、「メルカリ」をはじめとするCtoC分野のフリマアプリの普及により、二次流通の市場は拡大し、いまやその規模は2兆円を超えるとも言われています。一方、御社が運営するデザイナーズブランドの古着専門店「RAGTAG(ラグタグ)」は、既に1985年には1号店がオープンしています。時代に先駆けて事業を開始されたのには、どのようなきっかけがあったのでしょうか。

桜庭:女子高生が憧れのブランド品を前に「欲しいけれど、私たちには買えないね」と残念そうに会話している姿を創業者の高橋直樹が目にして、彼女たちがその服を着られる仕組みをなんとか作りたいと考えたのが企業のきっかけだったそうです。

1号店オープン当初の様子

1号店オープン当初の様子

ファッション業界全体として、当時から「いかに若い人にファッションを楽しんでもらうか」というのは大きな課題でした。「ブランド品であっても、中古品ならリーズナブルな価格で若い人に届けられるかもしれない」、そう思いついた高橋は一般消費者からデザイナーズブランドのアパレルを買い取り、それを提供する店舗をオープンさせることにしました。それがRAGTAGの1号店で、わずか3.5坪、原宿竹下通りの小さな店舗からのスタートでした。

ティンパンアレイ WEB事業グループゼネラルマネージャー 桜庭邦洋氏

ティンパンアレイ WEB事業グループゼネラルマネージャー 桜庭邦洋氏

当時、デザイナーズブランドの洋服の二次流通を担う企業はほとんどなく、ほぼ手探りの状態でしたが、徐々に事業を拡大させ、現在の店舗数は、RAGTAGと姉妹店の「rt(アールティー)」と合わせて15店舗。原宿店には1日に2,000から3,000人のお客さまが来店されていて、全体の年間売上高は約55億円に達しています。


二次流通
新品を販売する一次流通に対して、古着や古本、リサイクル品など、一度消費者の手に渡った商品を再販することを二次流通と呼ぶ。


オムニチャネルで他社にはない利便性を実現

——どのようにして事業を拡大してきましたか。

桜庭:事業を拡大してこられたのにはさまざまな要因があったでしょうが、EC、インターネット通販に早期から力を入れてきたのは特徴かもしれません。

弊社がECサイトを開設したのは1999年のことです。その頃は、ヤフーや楽天などのECサイトを利用する人がちらほら出てきたタイミングだったので、かなり早い参入だったと言えます。

以降、長年EC事業を行ってきているので、“ささげ業務”の効率化などノウハウの蓄積が豊富なのです。その成果として、サイトの商品掲載点数は常時20万を超え、アパレル業界トップ水準を誇り、ECの売上高は右肩上がりで伸び続けています。


ささげ業務
ECサイトに掲載する商品の情報制作業務のことで、撮影・採寸・原稿作成の頭文字をとった略称。商品画像やサイズ情報など、消費者が購買の意思決定を行うために必要な情報を整理する。


サイトがお客さまにとって使いやすいものになるよう、サービスの強化にも努めてきました。ご好評いただいているサイトの機能には、例えば「Virtusize」や「Fittingroom」があります。Virtusizeは、購入を検討している商品と自分が持っているアイテムとを比較して、商品のサイズ感を把握できる機能。Fittingroomは、持っているアイテムを基に、それに似たフィット感のアイテムを一度に複数探せる機能です。

ティンパンアレイ WEB事業グループゼネラルマネージャー 桜庭邦洋氏

サイトで見て気になった商品を店頭に取り寄せられる機能も搭載しています。中古品を実物確認してもらえるのは、弊社ならではの仕組みです。Web上と実店舗での機能を組み合わせ、どの販売チャネルでもスムーズにお客様が商品を購入できるようにするこの「オムニチャネル」化の実現は、事業拡大の1つの要因だと考えています。

店舗への取り寄せについては、予想をはるかに上回り多くの方々にご利用いただいています。いまではサイトからの購入以上に、店舗へ取り寄せての購入が多くなっているぐらいなのです。

そのほかにも、多言語多通貨の対応を行う国際的な電子商取引「越境EC」の構築を進めていたり、ディープラーニングを活用した「類似画像検索システム」を導入して、ユーザーがクリックしたアイテム画像に類似したアイテムを“おススメ商品”として表示させたりするなど、サイトにはさまざまな工夫を凝らしています。

一次流通と二次流通の垣根を越えた協力でファッション業界に新しい価値を

——御社は2018年、ワールドグループに子会社として加わりました。ワールドとしては、御社が持つそうした二次流通のECのノウハウに魅力を感じてのことだったのでしょうか。

桜庭:ワールドは、「ワールド・ファッション・エコ・システム(WFES)」と呼ばれる新しいビジネスモデルの構築を進めています。これは、同社が培ってきた衣料品の企画、生産、販売に関するノウハウやシステムをプラットホームサービスとして他社に積極的に提供していくことで、機会ロスや無駄をなくしていくものです。ファッション業界では、衣料品の供給過剰の問題などから、サスティナビリティーの面での対策が急務とされています。ロスや無駄のない産業世界を追求するうえで、二次流通をはじめとするシェアリングエコノミービジネスへの進出は欠かせないとワールドは考え、そのノウハウを持つ弊社も参画することになりました。

一次流通は、製造してお客様に販売すれば、流通は完了します。一方、二次流通は、販売の後お客様が弊社に服を売り、それがすべて倉庫に集められ、真贋判定の責任者による最終チェックを経て、ようやくECサイトや店舗で再販されるわけです。二次流通は、一次流通からさらにサプライチェーンが拡大されているイメージなのです。

ティンパンアレイ WEB事業グループゼネラルマネージャー 桜庭邦洋氏

具体的には、中古品は、たとえ同じデザイン、同じサイズの洋服でも、モノによって状態が変わります。そのため二次流通では、商品1つ1つに管理タグを付け、個別に管理する“個品管理”が必要になるのです。今後我々は、そうしたノウハウをワールド社に提供していきます。

一方で弊社は、ワールドが持つデジタル技術を活用していく予定です。ECにおいては、ささげ業務に割く労力が非常に大きく、コストがかなりかかるうえに、最近では人手不足も顕著になってきました。ですから、自動で撮影して自動で採寸するなど、ささげ業務の自動化を、ワールドと協力しながらできる限り進めていきたいと考えています。

——まさに、一次流通と二次流通の垣根を超えた協業といった印象です。しかし、一次流通と二次流通とは競合の関係にあるのではないですか。

桜庭:二次流通市場が盛り上がり、中古品を購入する人が増えれば、そのぶん新品が売れなくなり、二次流通は一次流通にとって害になるとの見方もあるでしょう。しかし、我々はそうは考えていません。二次流通が一次流通に貢献できる面も大いにあり、ともに成長していける間柄だと思っています。

例えば、定価2万円で購入した新品の服を、使わなくなった後に弊社などに5千円で売ったとしたら、消費者の実質的な負担は1万5千円に下がります。購入した商品を手軽に売れる仕組みが整っていれば、売ることを前提として新品を購入でき、その方が負担が少なくなるぶん、購入が促されるでしょう。

また、ブランド品は高価でなかなか買えないという人にも、新品に比べて価格が安い中古品なら手に取ってもらいやすいです。それで中古品を購入して使ううちに、そのブランドのファンになる人も出てくるわけで、そうすれば、いずれは新品を購入してもらえるようになるはずです。二次流通には、そのようにしてブランドを知ってもらうことでファンを増やすきっかけを作り、一次流通を含めファッション業界を活性化していく力があると考えています。

同社社内の壁に掲示されたメッセージ

同社社内の壁に掲示されたメッセージ

特に現代はファストファッションの台頭により、若者のファッション離れが進み、多くのブランドが若年層のファンの獲得に苦戦している時代です。その点については我々もまったく同じで、若い世代の弊社に対する認知度に課題を抱えています。ですから、一次流通と二次流通の企業が垣根を越えて協力し、若年層にファッションの真の楽しさやブランドの魅力を広め、業界を盛り上げていければいいと思っています。

ファッションの楽しさを伝えるユニークなプロジェクト

——そのために、特に取り組んでいることはありますか。

桜庭:ファッション業界を盛り上げていこうと、企画を立てては実施しています。いいモノをずっと大切にする喜びを伝えたいとの思いで行っているのが「R PROJECT(リメイクプロジェクト)」です。デザイナーとコラボレートして、古着素材をリメイクして販売するプロジェクトで、2009年に始めて以来、不定期で開催しています。

過去何度か開催し好評をいただいた偽ブランド品撲滅プロジェクト「憎むべきニセモノ展」も、強い想いを持って行っている企画です。この展覧会では、偽物の怖さを知ると同時に、本物の素晴らしさを体感してもらいたいと思い、偽ブランド品と本物の両方を展示して、実際に触れながら見比べられるようにしました。

憎むべきニセモノ展の様子

2015年に開かれた「憎むべきニセモノ展」の様子

さらに、ECサイト内には「WEAR am I?」というコンテンツを設けています。弊社のスタッフが次々に登場して「このブランドが好きで、このブランドのここがいい」と熱く語る特集なのですが、熱量がありすぎるせいで、毎回文字数がオーバーして困っています(笑)。

それらのプロジェクトでも伝えてきたように、ファッションは本当に楽しいものです。我々はただアパレルを売るだけでなく、作り手の思いやこだわりがつまったブランド品の良さを伝えられる企業でありたいと常に考えています。これからも、さまざまな企画や日々の接客を通して、地道にそれを実行し続け、業界全体を盛り上げながら自社の事業を活性化させていきたいと思います。

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GEMBA

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