シェアリングエコノミーは物流を変えるのか? 倉庫版Airbnb「souco」の新たなるサービス

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シェアリングエコノミーは物流を変えるのか? 倉庫版Airbnb「souco」の新たなるサービス

取材・文:杉原由花(POWER NEWS)、写真:佐坂和也


昨年10月に正式公開されたばかりの新サービス「souco」に注目が集まっている。soucoは倉庫の空きスペースを有効活用するためのシェアリングエコノミー、いわば“倉庫版Airbnb”だ。同社は借りたい時に、借りたいスペースだけレンタルできる仕組みを国内で初めて整え、最適な物流ルートで荷物を運ぶことを可能とし、物流業界の人手不足やドライバーの労働環境の改善に寄与しようとしている。soucoのサービス内容や、業界の課題解決法はいかなるものなのか、中原久根人代表取締役に話を聞いた。

倉庫の空きスペースを手軽に貸し借りできる新サービス

――「souco」のサービス内容について教えてください。

中原:倉庫の空きスペースを抱える企業と、スペースを借りたい企業をインターネット上でマッチングさせるサービスを提供しています。これは、国内唯一のサービスで、レンタルは最短1日から可能です。広さは、パレットと呼ばれる1メートル四方ほどの荷台1台分といった極小のスペースから、大きいと2000坪(6600平方メートル)あまりのものまであります。

利用者は、soucoのWebサイトで立地や料金、利用期間などの条件を設定して倉庫を検索し、レンタルを申し込んで契約書にサインをするだけですぐに倉庫を利用できます。一方、スペースの提供者は、空きスペースの情報を登録して、利用者からの申し込みを待つのみです。企業名や所在地など提供者に関する詳しい情報は、契約直前まで開示されないので、空きスペースの情報開示に前向きではない企業にも使っていただきやすい仕組みになっています。


soucoの利用イメージ

soucoの利用イメージ

中原:2018年10月にオープンβ版のサービスをスタートさせ、既に全国約200カ所の倉庫が登録されていて、トータルの坪数は15万坪から20万坪ぐらいで推移している状況です。大和ハウス工業様ほか、物流不動産会社のプロロジス様、シンガポールの物流施設大手グローバル・ロジスティック・プロパティーズ様など多くの大手企業にスペースをご提供いただき、提供者数は130社に上ります。利用者数については、昨年度から160%ほどの伸び率になっています。


株式会社souco 代表取締役 中原 久根人氏

株式会社souco 代表取締役 中原 久根人氏

中原:利用者からは「複数の倉庫事業者に個別に問い合わせしなくても、必要なスペースを必要な日数だけ借りられて便利」「フォーマットが決まっているので契約が簡単」といった反響をいただいています。提供者からは、「代金が先払いで、soucoが回収してくれるので、貸すのに手間がかからない」「決められた保険に利用者が加入する仕組みなので、火事など万一に備えられて安心」などと評価していただいています。

サービスの「標準化」で倉庫の短期レンタルを実現

――倉庫のプラットフォームが必要だと思ったのはなぜですか。

中原:倉庫業界について知るうちに、倉庫の“流通”に問題を感じるようになったからです。業界には「1年の短期」という言葉があり、倉庫の契約はどれだけ短くても1年。3年や5年が平均的で、それが原因でスペースの有効活用がうまくいっていないのです。

例えば、夏によく売れる飲料や、コートなどで冬に在庫がかさばる衣料品を取り扱うメーカーや小売事業者などは、飲料なら夏、衣料品なら冬の物量に合わせて広いスペースを確保するのが一般的です。つまり、それ以外の時期にはスペースが無駄になるとわかっていながら、ピーク時の数カ月間だけプラスで借りられる倉庫がないために、ピーク時に合わせて広いスペースを確保しているのです。


株式会社souco 代表取締役 中原 久根人氏

中原:また、海上輸送で、船の到着が予定より早まった場合には、予定していた日までの数日間、仮に荷物を置いておける倉庫をレンタルできず、保管先の確保に困るといった事態も起こっています。

このように、倉庫の流通の悪さがさまざまな弊害を生んでいると知り、それを解決する手段があればいいと思いました。それで発想したのがsoucoです。サービス提供以来、狙い通りに、そうした問題の解消に役立ったレンタルの事例も出てきています。

――必要とされるサービスだったとしても、前例のない新しいサービスに賛同してもらい、提供者を募るのは大変ではありませんでしたか。

中原:ハードルはとても高かったです。空きスペースを運用できれば収益になるので、soucoが提供者にとってメリットがあるサービスなのは確かです。ただ、前例がなく、どんな手間がかかり、事故などのリスクにどのように備えるのか、スペースの提供者になるみなさんは懸念を持っていたようです。

そこで、レンタルの一連の手続きを簡潔にするために、フォーマットを設けてサービスの標準化を図りました。つまり、誰もが共通の方法で利用できるようサービスを整え、プラットフォーム化したわけです。例えば、倉庫は、ありとあらゆるモノが、あらゆる形で保管される場所ですが、スペースにどんなモノが保管されるのかわからなければ、容易には貸し出せません。


利用画面のイメージ

利用画面のイメージ

中原:ですから、パレットなど、荷物を取り扱いやすい一定の荷姿で荷物を保管してもらうことを利用条件としました。リスクについては、レンタルで生じ得るリスクをカバーするため、火災保険などsouco専用の保険を開発して、利用者に加入してもらうことにしました。

そのほかにもさまざまな工夫を凝らしましたが、サービスの構築は、どうすれば使ってもらえるものになるか、スペースの提供をお願いした1社1社と話し合いながら、地道に進めていきました。現在の仕組みをつくり上げるのに時間がかかり、実は、起業して1年半ぐらいは、プラットフォーム上に利用者も提供者も、何もない状態が続きました。


株式会社souco 代表取締役 中原 久根人氏

中原:しかし、soucoは、先ほどお話しした倉庫の流通の問題に加え、物流業界の課題を解決に導く可能性を持つ、価値の高いサービスだと考えています。soucoのようなプラットフォームがなければ、ドライバー不足でモノが運べなくなる日が来るかもしれないと思っていたこともあり、サービスの構築はあきらめられませんでした。

「souco」の活用で物流拠点を自在に設け、輸送効率を向上

――具体的に物流業界のどういった課題を解決しますか。

中原:倉庫を短期間借りられれば、単発で物流拠点を設けて輸送効率を上げることができます。リンゴの輸送を例に説明すると、長野県で収穫されたリンゴは、消費地である東京から注文が入る度に、注文の量だけ小口でバラバラと東京まで輸送されるのが一般的です。しかし、もし長野県の組合が共同で、シーズン中のみ東京に冷蔵倉庫を借りたとすれば、大量のリンゴをまとめて東京まで輸送して倉庫で保管しておき、注文が入った際には、東京の倉庫から注文者のもとへ、近距離のみを小口で配送すればすみます。

中心拠点(ハブ)に貨物を一旦集約させ、拠点(スポーク)に仕分けて運搬するこの輸送方式を「ハブアンドスポーク方式」と呼び、中心拠点を設けずに産地から消費地までの長距離を小口で運ぶよりも、かなり効率的です。輸送効率が改善されれば、トラックドライバー不足を解消する助けにもなるでしょう。


通常の配送方法とハブアンドスポーク方式の違い

通常の配送方法とハブアンドスポーク方式の違い

中原:このリンゴの例は以前、お客さまから実際にご相談いただいた案件です。しかし、冷蔵倉庫など低温保管できる倉庫のレンタルに対応できておらず、ご期待に沿えませんでした。そうした倉庫の提供はもちろん、倉庫のレンタルのあらゆるニーズを網羅するサービスを目指したいと考えています。

もう1つ、この先実現させたいのが、倉庫利用者同士の共同輸送による物流の効率化です。倉庫の出庫の情報をシェアする仕組みを構築できれば、倉庫の利用者同士で、同じ方面に輸送する荷物を、1台のトラックに積んで共同輸送できるようになるでしょう。共同輸送をすればトラックの積載率が上がり、輸送も大幅に効率化されるはずです。

いまお話しした輸送効率に関わる2つの目標は、どちらも達成できると思っています。soucoをはじめとするシェアリングエコノミーは、余剰資源を再分配することで、社会全体を豊かにする仕組みです。まだサービスの提供を開始して間もないですが、手応えは十分にあります。倉庫業界や物流業界の課題解決に一層役立つものになるよう、着々とサービスを充実させていきます。




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