ITで物流の社会課題を解決し、世界を席巻したい――スタークスが抱く野望とは

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取材・文:井上俊彦、写真:井上秀兵

ネット通販(EC)の拡大に伴い荷物を運ぶドライバー不足や長時間労働などが社会問題となっている。スタークス株式会社は「テクノロジーとアイディアで社会課題を解決する」というビジョンを掲げ、通販企業の発送業務を代行するサービス「クラウドロジ」を提供してきた。「物流業界はいまだ、テクノロジーによる効率化が進んでいない」ととらえる同社代表取締役・上ノ山慎哉氏は、社会課題解決の第一歩としてIT による物流のイノベーションを目指している。

伸びていく市場で、情熱を傾けられる事業を作りたい

——2012年にスタークス株式会社を設立された経緯を教えてください。

上ノ山:もともと、将来的には起業したいと漠然と考えていたのですが、その気持ちが明確になったのには、ソフトバンクの孫正義さんの影響があります。


東日本大震災が起こったとき、翌日には孫さんが100億円の義援金を送ると発表しました。本当に世の中を変える人は、行動力がすごいなと思い、絶対に経営者になりたいと思ったのです。

上ノ山慎哉氏

スタークス株式会社 代表取締役 上ノ山慎哉氏

上ノ山:そこで孫さんのことを調べてみて、孫さんが28歳のときの講演の音声を聞く機会がありました。そこでは「起業は、伸びている市場で、一番になれるような事業、かつ経営者が情熱を傾けられるものをやりなさい。私はそれ以外はやりません」とおっしゃっていました。


私なりに、伸びていく市場とは何かと考えて、前職で関わっていたECはこれからも伸びるだろうと思いました。その中で一番になれるもの、かつ自分が情熱を傾けられるものはなんだろうと考えると、一顧客の課題解決だけではなく、業界、産業など、社会全体規模の課題解決につながるような事業だろう。つまり、できるだけ大きな問題に対してITでサービスを作って課題を解決するような事業にしようと考えました。

——ECの中の大きな課題が物流の部分だったわけですね。

上ノ山:倉庫や発送などを含めた物流のところに行き着いたのは3年前です。現在提供している「クラウドロジ」の前身である「リピロジ」ではリピート販売支援、売り上げを伸ばすことをサポートしていました。


しかし、売り上げが上がっても商品が送れないとどうしようもありません。その頃、いろいろなところで人手不足が叫ばれ始めていました。その中でも、いち早く解決しなくてはならないのが物流だと思ったのです。


我々の顧客であるEC事業者さんは今後増えることはあっても減ることはないと考えていました。それに伴って、荷物もこれからどんどん増えていくでしょう。物流の改革は、ECという産業の課題を解決するために取り組むべき問題だと思いました。

定期販売型だからこそできる正確な需要予測で配送を効率化

——御社の製品「クラウドロジ」はどのように配送を効率化するのでしょうか。

上ノ山:最終的には無人化、ロボット化だと思いますが、それには時間がかかります。配送ロボットや自動運転はまだまだ先のことでしょう。そこで、まずは今あるリソースを活用するにはどうしたらいいかと考えていて、2つのことを行なっています。AIによる需要予測と、倉庫など物流拠点の分散化=クラウド化です。


どこにどれだけものを運ばなければいけないのかという需要を予測することで、来週、来月にこのくらいの荷物が動きますよというデータを共有して、人員のシフトを計画できるようにしました。クラウド化については、提携する物流拠点を関東、関西、九州に配置しています。拠点を複数にすることで消費者により近い場所から荷物を運ぶことが可能になり、移動距離を少なくしてコストも削減できます。今後利用が増えれば拠点を増やすことも考えています。

クラウドロジ」の操作画面

クラウドロジ」の操作画面(提供:スタークス株式会社)

——需要予測についてはどのように行なっているのですか。

上ノ山:「クラウドロジ」の顧客の多くは定期販売型、例えばサプリメントや水、コスメなどの定期販売する商材を扱っている会社です。ですから、過去のデータや同じカテゴリの商品のデータなどから、来週、来月はどの地域で、どのくらい商品が売れるのかを予測し、適切な在庫を複数の倉庫に分散させることで、配達距離、時間、コストを最適化させています。今後は、発送業者さんにデータを送って人員を配置しておいてもらうことが可能になると考えています。


需要を予測することで、倉庫や配送会社にいつどのくらいの仕事がいくかを伝え、最適な人員を配置してもらう。これを最初のステップとして、ここはロボット化しようとか省力化しようということにつなげていければと思います。


将来的には、ウーバーやウーバーイーツのような非配送事業者を活用したサービスが出てくるでしょう。そうなったときには荷物はできるだけ近くの倉庫から運びたいですよね。いつどのくらいの荷物があるかわかると、少しの空き時間を使って配送をしやすくなるので、シニアや主婦層などの人材も活用できるようになるでしょう。その実現のためには倉庫が消費者の近くにあるということと、需要が正確に予測できることが鍵になるのではないでしょうか。

今はまだ倉庫側の発送業務の最適化を進めている状態です。今後は配送業務にもデータをつなげていきたいと考えています。

社会課題解決のカギは人の意識の変革

——そのように新しいシステムを導入するときには、配送業者からの抵抗のようなものはありませんでしたか

上ノ山:それも今取り組んでいる問題で、例えば倉庫会社の社長さんは我々の考え方に賛同してくれたとしても、実際に荷物を運ぶ現場のスタッフの方からは、「慣れ親しんだ今までのやり方のほうがいい」と言われてしまうことも少なくありません。まだ、理想と現実の間にギャップがある状態です。とはいえ、物流の効率化は我々だけでは実現できず、倉庫会社さんや配送会社さんとの連携があって成り立つものです。だからこそ、スムーズに導入が進まない場合は丁寧に話をして、現場の意見に向き合いながら一緒に取り組んでいきます。


また、社会課題の解決には、システムだけでなく人の意識の変革こそが必要だと思います。ECでは、売り手、買い手、運び手がいますが、買い手である生活者は商品は早く届いて当たり前、再配達が無料なのも当たり前、売る側も物流に対する要求レベルは高いけれど対価は安くて当たり前という意識がまだ残っているのではないでしょうか。

上ノ山慎哉氏

——そのような状況を変えるためにはどんなことが必要だと思われますか?

上ノ山:過去の例を振り返ると、CO2の問題が注目され、エコカーが売れるようになったときには少し値段が高くても環境への負荷を減らせる車を選ぼうという新しい価値観が広まりました。


同じように、我々は人が減っていく中で生活に不可欠な物流というインフラをどうやってうまく維持いくのかを考えていかなければなりません。例えば、現状は配送員が外国人だったというだけでクレームが来るケースがあります。しかし、人手不足の世の中で、「外国人の配達員は嫌だ」という価値観では生活していけません。このような課題を解決するためには、社会の変化に合わせて人の意識をアップデートしていく必要があると感じています。


我々はテクノロジーの会社ですから、テクノロジーによって人の力で負担しているコストを吸収できるように取り組んでいます。ただ、物流という大きなテーマに対して1社では解決することは難しいので、企業活動を通じて皆さんに共感・応援していただけるような情報発信をしていきたいです。

リアルでアナログな仕事の効率化にこそチャンスがある

——今後注目されている分野、人物などはありますか。

上ノ山:ECでは、次に人が足りなくなるのはコールセンターだと思います。コールセンターはECには不可欠ですが、人員の確保が課題となるでしょう。実はECのコールセンターへの問い合わせ内容は配達日時の確認、キャンセル希望など、限られたパターンで対応できるものが多い。そこで、コールセンターの代わりにチャットボットで対応するということなどはできそうです。


そのほかにも課題はたくさんあります。繰り返しになりますが、特に日本では労働リソースの減少が著しいので外国人、女性、高齢者の活用などを全部やってもおそらく足りないでしょう。こうした労働力不足に起因する問題の中でITを使って解消していけるカテゴリーには将来的に進出していきたいと考えています。


我々のビジネスはネットで完結するものでなく、リアルと結びついています。リアルの部分でビジネスをするためには細かいところまで様々なすり合わせが必要になり、すごく大変です。一方、大変なだけにGoogleやFacebookなどの巨大企業も参入しづらいでしょう。


リアルでアナログ、そして人がたくさん必要な仕事を、ITを使って効率化していくという分野にこそチャンスがあると思っています。テクノロジーの力とリアルを変えていくオペレーション力とマーケティング力、この3つの強みを生かして新しいビジネスにも参入していきたいですね。

上ノ山慎哉氏

上ノ山:オンラインの世界では、今からFacebook、Google、Appleに勝つのは難しい。ただ、人口減という社会課題において、日本は一番進んでいます。そこで、人口減によって産業が崩壊の危機に陥っているという状態をテクノロジーで解決できれば、そのノウハウはいずれ世界中で必要とされるはずです。かつて日本の家電が世界を席巻したのと同じことを、もう一度私たちの世代でやりたいです。

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