AIロボットで挑む持続可能なサイクルつくり――製造業をお手本にした産廃処理業者の画期的な現場感

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取材・文:杉原由花(POWER NEWS)、写真:井上秀兵

製造や建築の現場では日々、金属くず、ガラスくず、紙くずなど多種多様なゴミを種類ごとに分別し、産業廃棄物として処理している。しかし、現場で発生するゴミの約5%は、現場レベルでは分別不可能な「混合廃棄物」として残ってしまう。そんなやっかいなゴミの分別を一手に引き受けているのが、シタラ興産だ。新設した施設「サンライズFUKAYA工場」にはフィンランド製のAIロボットが導入されており、混合廃棄物の選別が自動で行われている。そして、なんと設備投資は25億円と資本金の250倍。なぜ設楽竜也代表取締役はそんな巨額の投資をしてまで、この施設をつくろうと考えたのか。ゴミを再利用可能な素材に生まれ変わらせる、産廃処理業界のイノベーターに話を聞く。

製造業を手本に産業廃棄物処理業界の自動化を推進

――サンライズFUKAYA工場では産業廃棄物の選別をしているとのことですが、具体的にはどのような作業をしているのでしょうか。

設楽:日本には、環境保護のため「廃棄物処理法」というものが定められており、建築などの工事現場で出たゴミはできる限りリサイクルしなければなりません。サンライズFUKAYA工場では建設現場などから排出されるゴミをリサイクル可能なものとそうでないものに分ける作業をしています。 もちろん建設現場でもゴミの分別は行われていますが、全体の5%ほどのゴミは、細かすぎたりして現場で分別しきれません。そうしたゴミは「混合廃棄物」と呼ばれ、そのままの状態では処分できないため、弊社で混合廃棄物を細かく選別し、法律で処分が認められている「産業廃棄物」にします。

混合廃棄物が運ばれてくる様子。

混合廃棄物が運ばれてくる様子。1日あたり、トラック約150〜200台分の廃棄物が搬入される

――サンライズFUKAYA工場での大掛かりなロボットによる自動作業は、まるで先進的な製造工場の工程を見ているかのようで、産廃処理のイメージが覆されました。他の産廃処理施設と何が違うのでしょうか。

設楽:一般的に混合廃棄物の選別は手作業で行われています。それに、サンライズFUKAYA工場のように屋内ではなく、天井がない場所で作業することが多い。ですから雨ならカッパを着て、猛暑や厳冬に耐えながら作業しなければなりません。私も作業員だったので経験していますが、重労働で苦しい仕事です。

また、単純作業の裏方仕事なので、人から褒められたり感謝されたりすることもめったにありません。さらに悪いのが、労災が起こりやすい点です。巻きこまれ事故やベルトコンベアの事故などで骨を折ってしまったり、指をなくしてしまったりすることもあります。これまで他社のそうした話をたくさん聞いてきました。

株式会社シタラ興産代表取締役の設楽竜也氏

株式会社シタラ興産代表取締役の設楽竜也氏

設楽:そのようにいいことが1つもない手作業による選別をなんとか自動化したいと強く思い、サンライズFUKAYA工場にはさまざまな素材、モノを自動で選別できるフィンランド製の産廃自動選別ロボット「ゼンロボティクスリサイクラー」を導入しました。このロボットを導入したのは、弊社が日本で初めてです。

先ほど「製造業の工場のよう」とおっしゃっていましたよね。実はサンライズFUKAYA工場は、それを思い描いてつくった施設なのです。

――製造業に着目したのには、何か理由があったのでしょうか。

設楽:シタラ興産は父が始めた会社で、私は2代目です。昔は会社を継ぐ気はなく、ホテルマンになりたいと思っていました。サービス業に興味があったのです。それで、学生時代は経営やビジネスを学んでいたのですが、授業で製造業の工場見学をする機会が度々ありました。

見学先は大手の工場が多く、たいていは自動化が進んでおり、人為的なミスが少なそうで、労災もまったく起こりそうにない。そんな環境をとてもうらやましく思いました。うちの施設とは大違いだなと。

というのも、廃棄処理の業界は自動化の面で非常に遅れているのです。廃棄物処理法が公布されたのが1970年のことで、まだ50年ぐらいしか業界の歴史がありません。そのためお手本にできるものが業界内には少なく、この業界より歴史が古くて実績もある製造業に自然と目が向いたのだと思います。製造業のライン生産や機械化、自動化に憧れ、それがシタラ興産を変えていく際にも手本になりました。


【 用語説明 】
産業廃棄物
事業活動に伴い生じた廃棄物のうち、法令で定められた20種類。

混合廃棄物
いくつかの種類の産業廃棄物が混合し、一体不可分の状態で排出されたもの。

廃棄物処理法
廃棄物の排出を抑え、発生した廃棄物はリサイクルする等の適正な処理をすることで、私たちの生活環境が安全に守られることを目的とした法律。


窮地に陥り決断した、“自動化”という大改革

——その後、どのような経緯で選別作業の自動化に至るのですか。

設楽:当時の弊社は広く浅く業務をこなしており、得意な領域というものがありませんでした。その点に問題意識を持っていたため、製造業と同じように自動化された施設をつくり、混合廃棄物の選別に特化させようと思ったのです。そして、選別が最も難しいとされる建設系の産廃物をターゲットにすることに決めました。

その後、導入する機械や施設のレイアウトを決めていくのですが、どうも何かが足らないと感じていました。せっかく新しく工場をつくるなら、地味で、あまりいいイメージを持ってもらえない産廃物処理業界に光を当てたいという願望があったからです。そこで、目玉になる設備を投入することにしました。多くの人に注目してもらえれば、その願望を叶えられると思ったからです。

自動化のきっかけについて語る設楽社長

2003年にはシタラ興産で選別したゴミの処理を中間業者が福島県に不法投棄を行い、監督を怠った責任として、国から8,000立方メートル分のゴミ撤去を命じられた。この事件も自動化に踏み切るきっかけになったという

――その目玉というのがゼンロボティクスリサイクラーだったのですね。

設楽:何かないかと必死で探すうちに、ゼンロボティクスリサイクラーをYouTubeで発見しました。とにかく実物を一目見たくて、動画を見た1週間後にはフィンランドのヘルシンキにあるZenRobotics社に向かいました。

そこで機械が導入されている施設を案内してもらい、ロボットが動いている姿を見たときに、「これをうちに入れられたら、産廃物処理業界だけでなく、他の業界からも関心を持ってもらえる」と確信しました。求めていたのはまさにこれだと感じました。

ゼンロボティクスリサイクラー

ゼンロボティクスリサイクラーが稼働する様子。混合廃棄物をベルトコンベアで流し、アームが種類ごとにゴミを選別する

設楽:しかし当初、ZenRobotics社からは、「日本で販売の予定はない。もし日本で売るとしても、宣伝効果が見込めるような大きい会社に売りたい」と導入を断られました。あきらめられず、月1度、3回続けてヘルシンキに行って頼み込むなかで、「うちは小さい会社だからこそ小回りが利き、誰が来てもすぐに見学してもらえる」とアピールして、ようやく導入にこぎ着けました。

ZenRobotics社とのその約束以上に、多くの人に見てもらいたいというのは本心だったので、導入が決まってからは “見せる工場づくり”に尽力しました。例えば施設内を見学しやすいよう配色やレイアウトにこだわり、作業で巻き上がるほこりを水に吸着させて地面に落とすために、巨大なミストシャワーも設置しました。その結果、2016年の竣工以来、この2年で約1万人に見学に来てもらっています。

工場全体の様子

見学用のスペースが設けられ、工場全体を見渡せる構造になっている

省人化はこれからの時代に必要不可欠

――“見せる工場”とはサービス業的な発想ですね。一方、自動化の効果についてはいかがでしたか。

設楽:ゼンロボティクスリサイクラーはカメラとセンサーで物体を識別し、ロボットアーム・ハンドで混合廃棄物の自動選別を行います。カメラとセンサーはかなり高精度で、例えば、青色のヘルメットのみをピッキングするという指示も可能です。また、AIが搭載されているので学習機能を持ち、選別を繰り返すことで精度は上がっていきます。

具体的な成果としては、作業効率が約6倍になりました。ベルトコンベアの速度はずいぶん上がり、ベルト幅も倍になり、一度により多くの産廃物を流せるようになりました。その結果、もともと18名3交代で行っていた作業が、2名3交代で済むようになり、1日あたり48名分の人員削減が実現しました。

ゼンロボティクスリサイクラーによるゴミ選別の様子

ロボットごとに2本のアームがあり、シタラ興産では2機のロボット、計4本のアームでゴミを選別している

設楽:また、自動化とは別の話ですが、細かい物まで選別できるようになったことで、同業者が選別処理できない建設系の廃棄物も受け付けられるようになりました。そのため、仕事をもらうために営業をかける必要がなくなりました。

見学で知ってもらった排出業者からの依頼も多いですし、愛知や静岡、山梨、長野、福島など県外の業者からも選別を頼まれています。“攻めない営業”のスタイルでも仕事が舞い込んできていて、喜ばしい限りです。

分別確認の様子

ベルトコンベアの最後尾には作業員が配置され、最後は人の目で分別ができているか確認している

設楽:親の代のころは単純焼却、つまり焼却で発生する熱エネルギーを回収し利用する熱回収などのリサイクルを一切せず廃棄物を焼却する業務を中心に行っていました。単純焼却は、職人が音などを聞きながら勘で作業するものなので、ベテランがいなくなるとたちまち仕事が回らなくなります。

しかし、職人はコミュニケーションが苦手な者も多く、近寄り難い雰囲気で、若い社員たちはなかなかその技を継承できませんでした。そこで私の入社後は、職人の暗黙知に頼らなくても、誰でも廃棄物を処理できるような施設に変えていこうと、機械化や自動化に取り組んできました。

工場の仕組みなどを解説する設楽社長

設楽社長自ら、見学者へ工場の仕組みなどを解説することも

設楽:かつてこの業界は、人海戦術で仕事がうまく回っていました。非効率でも人員を多数投入して、なんとかこなそうという方法です。その場合、人件費はかかるけれど設備投資は少なく済みます。

いまは時代が変わり、労働力が不足しています。そのため、人を多く使わなくても仕事が回るよう環境を整えることが重要です。サンライズFUKAYA工場の建設には莫大な資金が必要でしたが、労働力不足をカバーするために、設備投資は欠かせないものになってきていると思います。

混合廃棄物選別の技術で培ったものを世界の貧困地域へ

――これからも何か大きい目標に向かって挑戦される予定でしょうか。

設楽:これまでは、産廃物をリサイクルできるよう細かく選別することを徹底してやってきましたが、今後は、それを自社でリサイクルまでできるようにしたいと考えています。

例えば、現状では弊社で選別した廃プラスチックを、セメント会社などで石炭の代わりに燃料として使ってもらっています。また、再生砕石は砕石屋などで、土間コンクリートの基礎材や道路用の路盤材として使ってもらっています。

しかし、景気の影響などでリサイクル材に対する需要が減り、買い手が付かなくなると、せっかく苦労して取り出したものが使ってもらえず、全部ゴミになってしまいます。そのような事態を避けたい。そこで、弊社で生み出したリサイクル材だけでもいいから、自社でリサイクルできる仕組みをつくりたいと考えています。

その計画の1つが、廃棄物から出る集塵ダスト(さまざまなゴミに付着しているホコリ)を使った発電事業です。小型の火力発電になりますが、某大手企業の協力も決まっていて、施設建設のための土地の購入も済んでいます。

また、以前タイからミャンマーを歩いて移動した際に、子どもたちがゴミ捨て場で暮らし、拾ったゴミを売って、その日食べる分のお金をかせぐ姿を目の当たりにしました。痛ましいなんてものではなく、言葉も出ませんでした。簡単に解決できる問題じゃないことはわかっていますが、少しでもいいから協力するチャンスを得たいと思いました。これは目標というより夢ですね。

そのためにも、とにかくいまは真面目に技術力を磨いて社員を育てるなど、足場をしっかり固めて、そうして蓄えたものを何らかの形で発展途上国の子どもたちに提供したいと考えています。

今後のシタラ興産の展望を語る設楽社長


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